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令嬢は元暗殺者に恋をする
第56章 口止め
待って! とサラが声を上げた時にはすでに、短剣を手にしたハルは扉の前。
かちゃりと遠慮がちに薄く扉が開かれたと同時に、そろりと顔をのぞかせるようにして現れた侍女の腕をとり、部屋の中へと引きずりこむ。
素早く部屋の鍵をかけ、悲鳴を上げかけた侍女の口を片手でふさいで側の壁へと押しつけ身動きを封じる。
あっという間のことであった。
まばたきをすることも忘れ、驚いたように目を丸くする少女の顔は思っていたよりもまだ若い。
おそらくサラと同じ年、あるいは、もう少し上といったところか。
少々気がひけるものを感じたが、ここで騒がれ事が広がってしまえば、もっと面倒なことになる。
何より、サラの体面を汚すわけにはいかない。
絶対に、他の者にこのことを知られるわけにはいかない。
口止めと、そして、少しでも早くサラの怪我の手当をするためにも、この侍女には少しばかり役だってもらおうと思ったのだ。
すべてはサラを守るため。
可哀想だが、少しばかり、怖い思いをしてもらうのも仕方がない。
ハルはゆっくりとひとつ、瞬きをした。そして、開いたまぶたの奥の、その藍色の瞳からすっと感情が消えた。
かちゃりと遠慮がちに薄く扉が開かれたと同時に、そろりと顔をのぞかせるようにして現れた侍女の腕をとり、部屋の中へと引きずりこむ。
素早く部屋の鍵をかけ、悲鳴を上げかけた侍女の口を片手でふさいで側の壁へと押しつけ身動きを封じる。
あっという間のことであった。
まばたきをすることも忘れ、驚いたように目を丸くする少女の顔は思っていたよりもまだ若い。
おそらくサラと同じ年、あるいは、もう少し上といったところか。
少々気がひけるものを感じたが、ここで騒がれ事が広がってしまえば、もっと面倒なことになる。
何より、サラの体面を汚すわけにはいかない。
絶対に、他の者にこのことを知られるわけにはいかない。
口止めと、そして、少しでも早くサラの怪我の手当をするためにも、この侍女には少しばかり役だってもらおうと思ったのだ。
すべてはサラを守るため。
可哀想だが、少しばかり、怖い思いをしてもらうのも仕方がない。
ハルはゆっくりとひとつ、瞬きをした。そして、開いたまぶたの奥の、その藍色の瞳からすっと感情が消えた。

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