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令嬢は元暗殺者に恋をする
第59章 深い闇へ、落ちていく
診療所の扉を叩いてすぐに、その人物は現れた。
時刻は丁夜。
こんな時間に人がやってくるとは思わないだろうし、訪ねるにしても、非常識な時間だ。
当然、この家の住人も眠っているはず。
もしかしたら扉を叩いた音にすら気づかないかもしれない。
ならば、夜が明けた頃にもう一度出直そうかと思っていたその時、奥から急いで駆けつける足音が聞こえ、診療所の扉が開かれた。
現れたその人物は夜着姿に上着を羽織った格好であった。
こんな時間まで起きていたというわけでもないらしい。
その証拠に薄茶色の髪にはほんの少し寝癖のあとがついている。
「どうされました……か……?」
いったい今何時だと思っているんだ、と不機嫌な態度をとるかと覚悟はしていたが、扉から顔をのぞかせたその人物は意外にも真剣な顔で、今まで眠っていたとは思えないほど、口調もしっかりとしていた。
「おまえ……」
中から現れたその人物──テオは、まさか、訪ねて来たのがおまえだったとは……とでもいうように心底驚いたと目を丸くし、口を開けていた。
よもやこうして再会することになるとは相手も思わなかったのだろう。
自分とて、再びこうしてやってくることになるとはここを去るとき、少しも考えもしなかった。
カーナの森で、名も知らない小さな男の子を、突然現れた賊から守る為に戦い、不覚にも傷を負ってしまった。そして、そこで初めてサラと出会った。
彼女によって、なかば強引にこの診療所へと連れられてきたのは、ほんの数ヶ月前。
まだ、新緑が眩しい初夏の頃だった。
賊二十人近くを倒すという派手な行動をとってしまい、もしや抜け出した組織に自分の存在がばれやしないかと恐れ、傷が治ったと同時に、これ以上長居をすれば迷惑をかけることになると危惧を抱いてこの診療所を去った。
時刻は丁夜。
こんな時間に人がやってくるとは思わないだろうし、訪ねるにしても、非常識な時間だ。
当然、この家の住人も眠っているはず。
もしかしたら扉を叩いた音にすら気づかないかもしれない。
ならば、夜が明けた頃にもう一度出直そうかと思っていたその時、奥から急いで駆けつける足音が聞こえ、診療所の扉が開かれた。
現れたその人物は夜着姿に上着を羽織った格好であった。
こんな時間まで起きていたというわけでもないらしい。
その証拠に薄茶色の髪にはほんの少し寝癖のあとがついている。
「どうされました……か……?」
いったい今何時だと思っているんだ、と不機嫌な態度をとるかと覚悟はしていたが、扉から顔をのぞかせたその人物は意外にも真剣な顔で、今まで眠っていたとは思えないほど、口調もしっかりとしていた。
「おまえ……」
中から現れたその人物──テオは、まさか、訪ねて来たのがおまえだったとは……とでもいうように心底驚いたと目を丸くし、口を開けていた。
よもやこうして再会することになるとは相手も思わなかったのだろう。
自分とて、再びこうしてやってくることになるとはここを去るとき、少しも考えもしなかった。
カーナの森で、名も知らない小さな男の子を、突然現れた賊から守る為に戦い、不覚にも傷を負ってしまった。そして、そこで初めてサラと出会った。
彼女によって、なかば強引にこの診療所へと連れられてきたのは、ほんの数ヶ月前。
まだ、新緑が眩しい初夏の頃だった。
賊二十人近くを倒すという派手な行動をとってしまい、もしや抜け出した組織に自分の存在がばれやしないかと恐れ、傷が治ったと同時に、これ以上長居をすれば迷惑をかけることになると危惧を抱いてこの診療所を去った。

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