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令嬢は元暗殺者に恋をする
第59章 深い闇へ、落ちていく
 暗い夜の町をハルはひとり歩いた。
 その足が迷いなく向かうはファルクの元。

 ふと、立ち止まり、ハルは己の手を見つめた。
 腕と手に残るサラの温もり。
 ふわふわとした柔らかい感触。
 まだ幼い感じを残す甘くて優しい香り。

 吹く風にどこかの家の窓に飾られた植木鉢の花の花びらが舞い落ち目の前を過ぎる。
 その花びらをつかみとり強く握りしめる。

 大切なものを壊されて、許せるわけがないだろう。

 昼間、サラの屋敷の薔薇園で初めてファルクと出会った時、相手の意気を挫かせるほどの気を放ってやった。
 こちらに近づいてくるな。近づけば容赦はしないと。

 己の放つ無言の警告を相手が気づいたかどうか。しかし、あの場であの男は一歩も動けずに、自分たちが薔薇園から去っていくのを、ただ見ているだけだった。

 だが、あの男は結局、相手の力量をはかることはできなかった。
 つまり、それだけの男だったということだ。

 サラを傷つけられて、俺がおとなしく黙っていると思っていたか。
 それとも俺の見かけに騙されたか。
 俺が何もできないと思い込んでいるのか。

 ファルク・フィル・ゼクス。

 握った手をさっと勢いよく横に払う。
 開いた手のひら、指先から、無残にも握りつぶされた花びらが風に舞い飛んでいく。

 ハルの口許に酷薄な嗤いが刻まれた。

 待っていろ。
 今すぐ貴様の元へ行く。
 貴様はいったい誰を怒らせてしまったか、その身をもって思い知らせてやる。
 サラにあんな酷い真似をしたことを、この俺が後悔させてやる。
 さあ、貴様をどうしてやろうか。

 すがめる藍色の瞳の奥にちらつくのは逆鱗の炎。

 殺しはしない。
 けれど、生かしもしない。
 この先のおまえの未来をこの手で握りつぶしてやる。今度は俺が貴様を壊してやる。

 徹底的に。
 あと数刻で夜が明けるだろう。
 貴様が向かえる夜明けに、希望も絶望もない。
 ただの無だ。
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