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令嬢は元暗殺者に恋をする
第65章 報復 -6-
 この国の法は当然、知っているな。

 問いかけるハルに、ファルクは深く眉間にしわを刻む。
 それは何故、異国のおまえがこの国の法を語るという、不可解に満ちた表情であった。

 今から約二十年前、王となるはずであったルカシス殿下が毒によって殺害されてから、このアルガリタでは毒物の所持が発覚した場合、いかなる者であろうと死罪、という厳しい法が定められた。
 その法は、他国にはみられないこの国特有のもの。

 そして、いかなる者に例外はなく、それは貴族であるファルクとて免れることはできない。
 毒を手にしていたことが露見すれば、自身が刑罰を受けるどころか、最悪、ゼクス家そのものが破滅の一途をたどるという可能性もある。

「だから言っただろう。貴様は迂闊に喋りすぎた。自分で自分の首を絞めていると。俺を侮り、調子に乗ってこんなものを見せつけて、これを然るべき所へ差し出せば、貴様はどうなるか、わかっているな」

「そんなことになったら……」

「間違いなく、処刑台行きだ」

 処刑台という現実を突きつけられたファルクは、がたがたと歯を鳴らし、首を振る。
 怒りで顔を真っ赤にしたり、怯えて青ざめたりと忙しい男だ。
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