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令嬢は元暗殺者に恋をする
第66章 報復 -7-
「はひっ! ひ、ひーっ!」

 奇妙な声を発し、ファルクは床を這いつくばって、現れた男たちの元に救いを求めるよう近寄っていく。そして、情けないことに、彼らの後ろにこそこそと隠れてしまった。
 ファルクの変わり果てた姿を見た男たちはうっ、と声をもらして顔を歪める。

「……ファルク様!」

「これはいったい。どうされたのですか……」

 見るも無残な姿で床にへたりこみ、自分たちの足元にすがりつく主人を見下ろし、いったいこの部屋で何が起きたのかと、状況を確かめるように男たちは薄暗い部屋を見渡す。

 倒れたテーブル。
 こぼれたワイン。
 砕けたグラス。
 放置された抜き身の剣。
 床を染める血。
 そして最後に、彼らの視線が部屋にたたずむひとりの少年ハルへと向けられた。

 男たちが現れても、ハルに動揺の欠片も見あたらない。

「おまえら! 駆けつけるのが遅いではないか。何故すぐにやって来ない。賊だ。賊が侵入したのだ。それも凶悪な賊だ!」

 賊と叫ぶファルクの声に、男たちはいっせいに剣を抜いて身がまえ、部屋をきょろきょろと見渡す。

 剣をかまえたものの、肝心の賊ははたしてどこに? と言った様子であった。
 男たちの目にハルの姿は映してはいるものの、よもや、そのハル自身が賊だとは思っていないらしい。
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