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令嬢は元暗殺者に恋をする
第66章 報復 -7-
「何をしている。早くそいつを捕らえろ! いや、殺してしまってかまわない。殺せ……殺せ、殺せ殺せっ! 八つ裂きにして、番犬どもの餌にしてしまえ。骨まで犬畜生にしゃぶらせてやるのだ!」

 しかし、男たちは剣をかまえたまま、その場から動くことができず、固まったように立ちつくすだけ。

 ファルクがそいつと指さす人物はやはり目の前に立つ少年。だが、凶悪な賊というからには、どんな極悪な顔をしたやからかと思いきや。

 男たちの視線がハルにそそがれたまま離れない。
 中にはぽかんと口を開けている者もいる。

 ファルクが剣の名手だということは誰もが知っている。しかし、そのファルクがまさか、あの少年にここまで追いつめられたというのか。

 筋肉質で上背のある体型のファルクに対し、そこに立つ少年は女性のように細身な身体つき。
 とうてい、こんな惨い真似をするなどとは思えなかった。
 信じられないと、現れた男たちは何度も、足元に座り込んでいる自分たちの主とハルを交互に見やる。

「ファルク様、凶悪な賊というのは、まさかあの少年のことですか?」

 確かめずにはいられなかったのか、ひとりの男がファルクに尋ねる。

「おまえは馬鹿か! 他に誰がいるという。あいつが賊だ!」

「しかし……」

「おまえら気をつけろ。かなり頭のいかれた野郎だ。女みたいにきれいな顔をして、やることはえげつないぞ! とんでもないドSだ!」

「はあ……つまり、ファルク様はあの少年に、やられたのですか……?」

 おそるおそるといった態で、男はファルクに問いかける。
 すると、ファルクはひくひくと頬を引きつらせた。
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