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令嬢は元暗殺者に恋をする
第67章 報復 -8-
 男たちの登場は、この場から退くいいきっかけとなった。

 今は耐えろ、と強く自分自身に言い聞かせ、ハルは手をきつく握りしめこの場から立ち去ろうとファルクに背を向けかける。

 その瞬間、相手は慌てたように腰を浮かせた。
 散々な目にあわされた挙げ句、結局、奪われた毒の瓶を取り戻すことができなかったのだ。

 いや、三日後に返すと言われ、なおさらその意図がわからないと苛立ちと焦りを抱いているはず。

「その瓶をどうするつもりなのか知らないが、私が持っていたとおまえが言いふらしたところで誰ひとり信じやしない。そんなものなど私は知らないと言い切ればいいだけのこと。誰も私を疑ったりはしない。下民の、それも、この国の人間ではない異国のおまえなどより、みな私の言葉を信じるに決まっている。むしろ、そんなものを持っているおまえの方が怪しまれることになるだろう! 疑いをかけられ、罪を問われて処刑台にいくのはおまえだ!」

 最後の足掻きとばかりに早口でまくしたてるファルクを、もはや何も言うことなどないと一瞥し、ハルは背を向けバルコニーへと向かい歩き出す。
 ここへ現れた時と同様、バルコニーから退散するつもりだ。
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