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令嬢は元暗殺者に恋をする
第67章 報復 -8-
「ば、馬鹿が……っ! 本気で二十人の暗殺者を相手に戦おうというのか? そこまでしてあの娘を救おうと。あんな小娘のために、自分を犠牲にしてまで」
自分を犠牲に、か……。
ハルの瞳に暗い影が落ちる。
己の存在を組織に知らせてしまうかもという犠牲を払うことになったとしても。
それでも、俺はこの手で愛する人を守りたい。
「どんなにおまえが強くて腕に自信があったとしても、おまえに勝ち目などない。無駄死にするだけだ! そうだ、無駄死にだ!」
「ああ……」
バルコニーへと降り立ったハルは、何かを思い出したというようにああ、と声を落として立ち止まり、今一度ファルクを肩越しにかえりみる。
「その時、カーナの森に現れるのは、盗賊二十人を皆殺しにしたという頭のいかれた馬鹿者ではない」
「何……?」
「闇を駆け、一瞬にして敵を死へと誘う……黒い疾風(かぜ)だ」
「黒いかぜ?」
何のことだ? と首を傾げるファルクにハルは唇に緩やかな笑みを刻む。
もうひとりの俺を、貴様にだけは特別に見せてやろう。死よりも深い闇へと貴様を引きずり落としてやる。
二度と這い上がることのできない、闇の奥底へと……。
さっと風が吹く。
バルコニーに面する窓、カーテンのひだが風を孕んで大きく揺らぎ、ハルの身体を覆い隠す。風がやみ、ふわりとカーテンが元に戻ったとき。
そこにはもう、ハルの姿はなかった。
自分を犠牲に、か……。
ハルの瞳に暗い影が落ちる。
己の存在を組織に知らせてしまうかもという犠牲を払うことになったとしても。
それでも、俺はこの手で愛する人を守りたい。
「どんなにおまえが強くて腕に自信があったとしても、おまえに勝ち目などない。無駄死にするだけだ! そうだ、無駄死にだ!」
「ああ……」
バルコニーへと降り立ったハルは、何かを思い出したというようにああ、と声を落として立ち止まり、今一度ファルクを肩越しにかえりみる。
「その時、カーナの森に現れるのは、盗賊二十人を皆殺しにしたという頭のいかれた馬鹿者ではない」
「何……?」
「闇を駆け、一瞬にして敵を死へと誘う……黒い疾風(かぜ)だ」
「黒いかぜ?」
何のことだ? と首を傾げるファルクにハルは唇に緩やかな笑みを刻む。
もうひとりの俺を、貴様にだけは特別に見せてやろう。死よりも深い闇へと貴様を引きずり落としてやる。
二度と這い上がることのできない、闇の奥底へと……。
さっと風が吹く。
バルコニーに面する窓、カーテンのひだが風を孕んで大きく揺らぎ、ハルの身体を覆い隠す。風がやみ、ふわりとカーテンが元に戻ったとき。
そこにはもう、ハルの姿はなかった。

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