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令嬢は元暗殺者に恋をする
第69章 会いたい
 ベッドの上に膝を抱えて座っていたサラは、そろりと顔を上げ、窓の外へと視線を転じた。

 丸い月が物憂げにこちらを見下ろしている。

 屋敷に連れ戻されてから、自室ではない別の部屋に押し込められ、決まった時間に食事を運びにやってくる侍女以外、誰とも会うこともなく、ろくに会話もしていない。

 その侍女でさえ、祖母にきつく言い聞かされているのだろう、話しかけても困ったように視線をそらし、曖昧に笑い最低限の言葉しか返してくれなかった。

 屋敷を抜け出したことで、祖母から厳しい叱責をくらうだろうと覚悟はしていたが、よほど自分とは顔をあわせたくないのか、姿を見せることもなかった。

 もちろん、部屋の外にも出してくれない。

 式の当日まで部屋から一歩たりとも出すつもりはないようだ。

 何度か扉の向こうで娘に会わせて欲しいという父と母の声が聞こえたが、やはり、祖母の言いつけか、扉の前にいた見張りたちはがんとして受けつけず、父と母を追い返してしまった。

 この屋敷は祖母が支配しているといっても過言ではない。

 誰も彼女の命令に逆らうことはできない。見張りの者たちも、やむを得ずだったのであろう。

 まるで、ここは牢獄。
 私は罪人。
 処罰は望まないあの男との結婚。

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