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令嬢は元暗殺者に恋をする
第69章 会いたい
 窓の外には常に何人かの見張りがつめ、とうてい逃げ出すことはできない。

 さらに、部屋の扉には鍵がかけられ、廊下にも数人の見張りがはりついているという物々しさであった。

 でもね、たくさんの見張りをたてても、どんなに腕のたつ男たちを置いても、ハルには通用しないと思うの。

 ハルが本気になって私のことを連れ戻しにやってきたら、いつだってこの部屋から簡単に抜け出せるのよ。

 そんなことを考え、サラは肩を揺らしてくすくすと笑った。
 しかし、その顔からすっと笑みが消えていく。
 屋敷に連れ戻されてから二日が経とうとしたが、ハルがここへ姿を現すことはなかった。

 そして、いよいよ明日、ファルクとの結婚式を迎えようとしていた。けれど、式前日の夜だというにもかかわらず、屋敷内はお祝い的な空気はなく、しんと静まり返っている。

 結婚式とはいっても、明日の式は一日でも早くサラと一緒になりたいというファルクのたっての希望で、ひとまず、内輪だけであげる簡単な式である。
 正式な結婚式は当初の予定通り夏の終わり。

 それにしても、祖母がよくそんなファルクのわがままな願いに首を縦に振ったものだと驚かずにはいられない。
 それほど、ファルクは祖母に信頼されているのか。
 あの男の本性を見抜くことができずに。
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