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令嬢は元暗殺者に恋をする
第6章 あなたは最低な人
師が留守である診療所は、当然休診日となり、テオにとってもそう多くはない貴重な休息日であった。
こんな日は、たまっている書物を、時が経つのも忘れて読み耽ることがテオにとっての最高の贅沢であった。
朝から書物に夢中になり、三冊目にさしかかった頃、ようやくテオは、そういえばと本から視線を外し顔を上げた。
家の中が妙に静かなことに気づく。
午前中はハルのためにと、サラがかいがいしく世話をやいていたのは覚えている。
いつもなら、何か話をしてくれとねだるのだが今日はそれもない。おそらく、あの少年の部屋にいるのだろう。
ふと、テオは嫌な予感に胸を騒がせた。
立ち上がり、サラを探すため部屋から出る。
迷わず、ハルの部屋に足を向けたテオは扉の前で硬直した。
中から聞こえるのはすすり泣くサラの声。
「サラ!」
テオは慌てて扉を開け放ち、目の前の光景に愕然とする。
ベッドの上、ハルの腕の下で涙を流すサラの姿。
こんな場面を見られても動じる様子もなく、ハルはふっと笑いベッドからおりた。
すぐに駆け寄り、テオはサラを抱きしめる。
テオの首に両腕を回し、声を殺してサラは泣いた。
「もう大丈夫だから。大丈夫だから……」
テオは何度も大丈夫を繰り返しサラをなだめる。
「サラ、お部屋に戻って」
サラは一度だけハルを睨みつけると、逃げるように部屋から出て行ってしまった。
こんな日は、たまっている書物を、時が経つのも忘れて読み耽ることがテオにとっての最高の贅沢であった。
朝から書物に夢中になり、三冊目にさしかかった頃、ようやくテオは、そういえばと本から視線を外し顔を上げた。
家の中が妙に静かなことに気づく。
午前中はハルのためにと、サラがかいがいしく世話をやいていたのは覚えている。
いつもなら、何か話をしてくれとねだるのだが今日はそれもない。おそらく、あの少年の部屋にいるのだろう。
ふと、テオは嫌な予感に胸を騒がせた。
立ち上がり、サラを探すため部屋から出る。
迷わず、ハルの部屋に足を向けたテオは扉の前で硬直した。
中から聞こえるのはすすり泣くサラの声。
「サラ!」
テオは慌てて扉を開け放ち、目の前の光景に愕然とする。
ベッドの上、ハルの腕の下で涙を流すサラの姿。
こんな場面を見られても動じる様子もなく、ハルはふっと笑いベッドからおりた。
すぐに駆け寄り、テオはサラを抱きしめる。
テオの首に両腕を回し、声を殺してサラは泣いた。
「もう大丈夫だから。大丈夫だから……」
テオは何度も大丈夫を繰り返しサラをなだめる。
「サラ、お部屋に戻って」
サラは一度だけハルを睨みつけると、逃げるように部屋から出て行ってしまった。

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