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令嬢は元暗殺者に恋をする
第70章 戦い前夜
「他の誰でもない、おまえにしかできなくて、おまえにしか頼めない」

 いったん言葉を切ったハルの藍の瞳に、切実な色が揺れ動く。

「……力を、貸して欲しい」

「そんなふうにおまえに頼られると、ますます張り切りたくなるな。俺にとっては最高の口説き文句だぞ。何でも言ってみろ。力になってやる」

 頼られてよほど気分がいいのか、それとも、頼ってきたのがハルであったというのがなおさらか、シンの表情はことさら嬉しそうであった。

 俺にできることならではなく、何でもやってやるというシンの頼もしい返答に、張りつめていたものが全身からすっと、抜けていくのを感じた。

「明日の晩、カーナの森に人を立ち入らせないようにして欲しい」

「カーナの森に、人を?」

 わずかに眉をあげて問い返すシンの目をまっすぐ見つめたまま、ハルは静かに、そして、ゆっくりとうなずいた。案の定、シンは驚きに目を見開く。

「それはまた……」

 声をつまらせるシンのその先の言葉は、無茶なことを言い出す、と続けたいのだろう。しかし、無茶だと思うのは当然のこと。
 メイルとアルガリタの町を行き来するには、カーナの森を通るしかなく、他に迂回する路はない。

 確かに、夜ともなればめっきり人の通りも減少する。が、それでもまったくなくなるというわけではないのだ。

「無理ならいい」

「おい……そんな思いつめた顔で俺に力を貸して欲しいと言っておきながら、無理ならいいって、引くのが早すぎるだろ。それに、俺はできない、とは言っていない」

 ハルはふっと笑った。
 この男なら、嫌な顔ひとつせずに、頼み事を引き受けてくれるだろうことはわかっていた。
 だからこそ。

「そうだな。事情も話さず力を手を貸してくれとは、あまりにも勝手がすぎる話だな」

「別に、話したくないなら無理に話さなくてもいいぞ」

 こういうところも、シンらしいといえばシンらしい。しかし、ハルはいや、と首を振る。
 サラが関係するならば、シンにとってもまったく無関係というわけでもない。
 むしろ、話すべきであろう。

 一呼吸置き、ハルは事情をシンに打ち明けた。
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