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令嬢は元暗殺者に恋をする
第74章 最後の告白
右手をあげたファルクの、それが合図であるかのように、左右の茂みの陰から数人、いや、数十人の人影が足音もなく現れた。
手にそれぞれ得物を携え、みな一様に黒い衣装を身にまとい、口許まで黒い布でおおい顔を隠している。
隙のないかまえと獲物を仕留めようとする殺気は偽りのない本物。
現れた男たちは声ひとつ発することなく、武器をかまえ身動ぐことなく立ち尽くす。
ファルクの次の合図を待っているのだ。
「これは……何? これは……」
声をつまらせ、腕にしがみついてきたサラの肩を引き寄せながら、ハルは視線だけを動かし、ざっと辺りを見渡す。
ぐるりと周囲を囲まれたようだ。
否、馬車がこの場へ到着した時点で、現れた暗殺者たちに囲まれていたことに気づいていた。
木陰に身をひそめ、ファルクの合図を待っていた彼らの気配に。
それでも、ハルの表情には焦燥も迷いの片鱗すらも見あたらなかった。ただ口許に静かな笑みを刻むのみ。
「これはどういうことだ、と言いたいのかね?」
ファルクはふふっと肩を揺らし、ひとしきり笑った後、大仰に両手を広げた。
己が有利な立場にあると信じて疑わない時の、いつもの芝居がかった仕草だ。
「見ての通りだよ。私たちは別荘地に向かう途中のこのカーナの森で、突然現れた賊に襲われるのだ」
「私たち? 賊? 襲われる?」
当然のことながら、何も知らないサラはファルクの言っている意味がわからないと、小さく首を振る。
「この森には、しばし賊が現れるのだよ。そして、今夜も貴族の馬車を狙った賊が現れ、私たちは不運にも殺されかける。残念なことに……今度ばかりは救いの手が現れることはなかった」
「救いの手……?」
「賊二十人を惨殺した、頭のいかれた馬鹿だよ」
「だって、それは……」
と言って、サラはちらりとハルを見上げる。
「それに、この人たちは……」
サラの目から見ても、彼らがただの賊ではないことは明らかであった。
身にまとう雰囲気が普通の人のそれとは違う。
もっと禍々しくて殺伐とした気配を漂わせる者たち。
咄嗟にサラははっとなってハルを見上げる。
ようやく、ハルがこの場に現れた理由を理解する。
手にそれぞれ得物を携え、みな一様に黒い衣装を身にまとい、口許まで黒い布でおおい顔を隠している。
隙のないかまえと獲物を仕留めようとする殺気は偽りのない本物。
現れた男たちは声ひとつ発することなく、武器をかまえ身動ぐことなく立ち尽くす。
ファルクの次の合図を待っているのだ。
「これは……何? これは……」
声をつまらせ、腕にしがみついてきたサラの肩を引き寄せながら、ハルは視線だけを動かし、ざっと辺りを見渡す。
ぐるりと周囲を囲まれたようだ。
否、馬車がこの場へ到着した時点で、現れた暗殺者たちに囲まれていたことに気づいていた。
木陰に身をひそめ、ファルクの合図を待っていた彼らの気配に。
それでも、ハルの表情には焦燥も迷いの片鱗すらも見あたらなかった。ただ口許に静かな笑みを刻むのみ。
「これはどういうことだ、と言いたいのかね?」
ファルクはふふっと肩を揺らし、ひとしきり笑った後、大仰に両手を広げた。
己が有利な立場にあると信じて疑わない時の、いつもの芝居がかった仕草だ。
「見ての通りだよ。私たちは別荘地に向かう途中のこのカーナの森で、突然現れた賊に襲われるのだ」
「私たち? 賊? 襲われる?」
当然のことながら、何も知らないサラはファルクの言っている意味がわからないと、小さく首を振る。
「この森には、しばし賊が現れるのだよ。そして、今夜も貴族の馬車を狙った賊が現れ、私たちは不運にも殺されかける。残念なことに……今度ばかりは救いの手が現れることはなかった」
「救いの手……?」
「賊二十人を惨殺した、頭のいかれた馬鹿だよ」
「だって、それは……」
と言って、サラはちらりとハルを見上げる。
「それに、この人たちは……」
サラの目から見ても、彼らがただの賊ではないことは明らかであった。
身にまとう雰囲気が普通の人のそれとは違う。
もっと禍々しくて殺伐とした気配を漂わせる者たち。
咄嗟にサラははっとなってハルを見上げる。
ようやく、ハルがこの場に現れた理由を理解する。

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