この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第74章 最後の告白
「愛しているよ」

 紡ぐ言葉は最後の告白。
 その一言にすべての思いを込めて。

 今宵限りでサラとの別れを決意したのなら、もう二度と伝えることはかなわない。

 触れることも。
 口づけをすることも。
 この手に抱いて愛することも。
 サラの笑顔を見ることも。

 可愛い声で自分の名を呼んでくれることを聞くことも。
 何もかもすべて、手放さなければならない。

 ハルの顔がわずかに歪む。

 失ってしまう。

 そう思った瞬間、抑え込んでいた感情が制御できずにあふれだしそうになり、添えていたサラの頬から手を離す。
 手のひらに残る温もりを、指先にこぼれ落ちた涙の熱さを、忘れない、逃さない、記憶に刻みつけようと、手をかたく握りしめ。

 そして──。

 揺らぎかけた迷いを振り切り、サラに背を向け足を踏み出す。

「ハル……」

 震えるサラの声に呼び止められる。
 立ち止まりハルは振り返った。
 無言で見つめ合う二人の間にさっと、風が吹き抜けていく。

「お願い。どうか……」

 組んだ手を祈るように胸のあたりへと持っていき、泣きそうな目でそう訴えかけてくるサラに、ハルは微笑みを返す。

「すぐに戻るから。待っていて」

 呟くハルの声が、吹き抜けていく風にさらわれ消えていく。
 サラの耳には届くことはなかった。
 再びサラに背を向けたハルの表情から、一瞬にして笑みが消え去った。

「愛しい恋人との別れは済んだかな?」

 戯けた口調で揶揄するファルクに、ハルが答えることはなかった。
 もはや、一言も。

 様相が一変したハルの態度に、ファルクは眉間にしわを寄せる。

「何だねその目は……何だというのだ!」

 怯えるファルクから視線を外し、ハルは剣を手に暗殺者たちと向き合った。
/835ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ