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令嬢は元暗殺者に恋をする
第74章 最後の告白
「愛しているよ」
紡ぐ言葉は最後の告白。
その一言にすべての思いを込めて。
今宵限りでサラとの別れを決意したのなら、もう二度と伝えることはかなわない。
触れることも。
口づけをすることも。
この手に抱いて愛することも。
サラの笑顔を見ることも。
可愛い声で自分の名を呼んでくれることを聞くことも。
何もかもすべて、手放さなければならない。
ハルの顔がわずかに歪む。
失ってしまう。
そう思った瞬間、抑え込んでいた感情が制御できずにあふれだしそうになり、添えていたサラの頬から手を離す。
手のひらに残る温もりを、指先にこぼれ落ちた涙の熱さを、忘れない、逃さない、記憶に刻みつけようと、手をかたく握りしめ。
そして──。
揺らぎかけた迷いを振り切り、サラに背を向け足を踏み出す。
「ハル……」
震えるサラの声に呼び止められる。
立ち止まりハルは振り返った。
無言で見つめ合う二人の間にさっと、風が吹き抜けていく。
「お願い。どうか……」
組んだ手を祈るように胸のあたりへと持っていき、泣きそうな目でそう訴えかけてくるサラに、ハルは微笑みを返す。
「すぐに戻るから。待っていて」
呟くハルの声が、吹き抜けていく風にさらわれ消えていく。
サラの耳には届くことはなかった。
再びサラに背を向けたハルの表情から、一瞬にして笑みが消え去った。
「愛しい恋人との別れは済んだかな?」
戯けた口調で揶揄するファルクに、ハルが答えることはなかった。
もはや、一言も。
様相が一変したハルの態度に、ファルクは眉間にしわを寄せる。
「何だねその目は……何だというのだ!」
怯えるファルクから視線を外し、ハルは剣を手に暗殺者たちと向き合った。
紡ぐ言葉は最後の告白。
その一言にすべての思いを込めて。
今宵限りでサラとの別れを決意したのなら、もう二度と伝えることはかなわない。
触れることも。
口づけをすることも。
この手に抱いて愛することも。
サラの笑顔を見ることも。
可愛い声で自分の名を呼んでくれることを聞くことも。
何もかもすべて、手放さなければならない。
ハルの顔がわずかに歪む。
失ってしまう。
そう思った瞬間、抑え込んでいた感情が制御できずにあふれだしそうになり、添えていたサラの頬から手を離す。
手のひらに残る温もりを、指先にこぼれ落ちた涙の熱さを、忘れない、逃さない、記憶に刻みつけようと、手をかたく握りしめ。
そして──。
揺らぎかけた迷いを振り切り、サラに背を向け足を踏み出す。
「ハル……」
震えるサラの声に呼び止められる。
立ち止まりハルは振り返った。
無言で見つめ合う二人の間にさっと、風が吹き抜けていく。
「お願い。どうか……」
組んだ手を祈るように胸のあたりへと持っていき、泣きそうな目でそう訴えかけてくるサラに、ハルは微笑みを返す。
「すぐに戻るから。待っていて」
呟くハルの声が、吹き抜けていく風にさらわれ消えていく。
サラの耳には届くことはなかった。
再びサラに背を向けたハルの表情から、一瞬にして笑みが消え去った。
「愛しい恋人との別れは済んだかな?」
戯けた口調で揶揄するファルクに、ハルが答えることはなかった。
もはや、一言も。
様相が一変したハルの態度に、ファルクは眉間にしわを寄せる。
「何だねその目は……何だというのだ!」
怯えるファルクから視線を外し、ハルは剣を手に暗殺者たちと向き合った。

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