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令嬢は元暗殺者に恋をする
第6章 あなたは最低な人
 テオの両目から悔し涙がこぼれ落ちた。
 その涙を手の甲で拭い、血がにじむほどに唇を噛みしめ、テオは床に散らばった薬の粉末を手でかき集める。

 ふと、テオの動作が固まった。そして、卓の上に並べられた薬品類に視線を上げる。
 あの子どものために調合した薬草と粉末の入った瓶が三種類、卓の上に並べられてある。

 その中の一つ、ミゼラータの薬草。
 それは薬草を乾燥させた、独特の赤茶色をした葉である。
 そのミゼラータの薬草と、床に散らばった粉を何度も交互に見やり、テオは愕然とする。

 一気に血の気が引いていくのがわかった。
 調合した薬の分量がいつもと違うことに、この時初めて、テオは気づいたのである。
 そう、赤茶色の粉、つまりミゼラータの薬草をすりつぶした粉末が、いつもよりも多かったのだ。

 そんなこと……。
 僕は……。

 テオは小刻みに唇を震わせた。

 ミゼラータの薬草。
 これは解熱作用としては最高の効果をもたらす薬草だが、量を誤れば死にも繋がる薬草でもあった。
 良い薬草とは得てしてそういうものである。
 薬にもなれば毒にもなる。

 あの子どもの命を奪うところだったのは、僕の方だった。
 もしかして、あいつはそのことに気づいてわざと……。

 その場で言葉にして指摘しなかったのは、テオの体面と診療所の名誉を考えてのことか。

 だが、果たしてハルに薬の知識があったというのだろうか。

 テオは何度も頭を振った。

 わからない……。
 けれど、あの子どもも僕も結果、あいつに救われたということになる。

「どうしたの……テオ?」

 様子のおかしいテオ気づき、サラは遠慮がちに声をかけてくる。

 テオはゆっくりと薬の散らかった床から顔を上げた。
 乾いた笑いが唇からもれる。

「僕は薬の分量を間違えていた」

「え?」

「僕は危うくあの子を殺してしまうところだった」
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