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令嬢は元暗殺者に恋をする
第6章 あなたは最低な人
 つかんでいたハルの胸ぐらから手を離し、テオは再び薬の調合に取りかかり始めた。

 手順は同じ。
 最初の時よりも手際よく、早く完成させることができた。

 今度こそできあがった薬を、苦しそうに息を吐く子どもの口に流し込む。
 テオは流れるひたいの汗を手の甲で拭った。

「もう大丈夫です。これですぐに熱はひくでしょう。もし、それでも様子が変わらないようでしたら、夕方には先生が戻ります。その頃に、もう一度こちらへいらして下さい」

 母親は涙を流し、礼の言葉を何度も何度も述べ、診療所を後にした。

 静まり返った診療所に気まずい空気が流れた。
 母親を見送ったテオは、嫌悪もあらわにハルを睨みつける。

「おまえは人の心を持たない悪魔だ」

 それはどうも、と鼻で嗤うハルの態度に、サラは怒りをにじませた表情で歩み寄り、右手を大きく振り上げた。

 瞬間──。

 頬を叩く派手な音が診療所内に響き渡った。

 ハルはゆっくりと顔を上げ、ひたいにかかる前髪の隙間から、唇を引き結び涙を浮かべているサラに視線を落とす。

 サラの顔には最低という感情が浮かんでいた。
 信じていたのに裏切られたという悲痛な表情でもあった。

 ふっと口許をゆがめ、ハルは背を向け言葉もなくその場から立ち去った。

 テオは崩れるように膝をつき、握りしめたこぶしを震わせた。
 怒りと悔しさでどうにかなってしまいそうだった。
 気落ちするテオの肩にサラがそっと手をかける。

「テオ……」

「何故、あんな奴のために僕や先生が面倒をみてやらなければいけないんだ。人の命を救うのが医師や薬師の使命と先生は口癖のようにいつも言っていた。もちろん僕もそう思っている。だけど……世の中には救う価値もない人間だっている!」

 あいつは最低な人間だ……。
 けれど、こんなことを考えてしまう自分も最低だ。
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