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令嬢は元暗殺者に恋をする
第76章 戦い -2-
「ハル……これで……」
終わりなの? と、震える声音で問いかけてくるサラに、ハルは否と首を振る。
終わりではない。
誰ひとり逃がさない、この場から生きて帰さない、すべてこの手で始末すると、倒した敵の数は数えてきた。
斬った相手を悪戯に数えて自慢にするわけではない。
サラや自分に降りかかるであろう後の憂いを断ち切るためだ。
先ほどの男で、倒したアイザカーンの暗殺者たちの数は十九人。
まだ、ひとりいる。
姿は見えない。
が、気配は感じる。
戦いが始まってからずっと、その人物は木の陰に身をひそませ、必死で気配を絶ち、息を殺し、この状況を見続けていた。
隙をついて斬りかかるつもりであったのだろう。
けれど、立ち向かう意気を挫かれ、とうとう最後の最後まで姿を現すことができず、生き残ってしまった。
すでにその者の殺気も戦意も感じられない。
しんとした空気から伝わってくる震える息づかい。
怯え。
恐怖。
最後のひとりとなってしまった今、その者は何を考えているのか。
先ほどの暗殺者のようにみっともなく、命乞いをしてくるだろうか。
だが、たとえ、武器を捨て地にひたいをこすりつけて助けを求めても、生かすつもりはない。
おそらく、その人物も、己の迎える結末がどうなるか、覚悟はしているはずだ。
助かりたいと願うのなら方法はただひとつ。
この俺を倒せばいい。
だが、それは無理なことだとわかっているが故にあまりにも酷な話だ。
ハルはゆっくりと斜め後ろ、その人物がひそんでいるであろう木の茂みを振り返る。
ひっ、と小さな悲鳴をもらす声と、かさりと木の葉が擦れ合う音。
間違いなく最後のひとりはそこにいる。
哀れなほどに怯えながら。
それでも、もはや逃げられないと決意を固めたのだろう。
「う、うあーっ!」
ハルが視線を向けた茂みから、その人影が勢いよく飛び出してきた。
叫びを上げるその声は、まだ子どもの声であった。
終わりなの? と、震える声音で問いかけてくるサラに、ハルは否と首を振る。
終わりではない。
誰ひとり逃がさない、この場から生きて帰さない、すべてこの手で始末すると、倒した敵の数は数えてきた。
斬った相手を悪戯に数えて自慢にするわけではない。
サラや自分に降りかかるであろう後の憂いを断ち切るためだ。
先ほどの男で、倒したアイザカーンの暗殺者たちの数は十九人。
まだ、ひとりいる。
姿は見えない。
が、気配は感じる。
戦いが始まってからずっと、その人物は木の陰に身をひそませ、必死で気配を絶ち、息を殺し、この状況を見続けていた。
隙をついて斬りかかるつもりであったのだろう。
けれど、立ち向かう意気を挫かれ、とうとう最後の最後まで姿を現すことができず、生き残ってしまった。
すでにその者の殺気も戦意も感じられない。
しんとした空気から伝わってくる震える息づかい。
怯え。
恐怖。
最後のひとりとなってしまった今、その者は何を考えているのか。
先ほどの暗殺者のようにみっともなく、命乞いをしてくるだろうか。
だが、たとえ、武器を捨て地にひたいをこすりつけて助けを求めても、生かすつもりはない。
おそらく、その人物も、己の迎える結末がどうなるか、覚悟はしているはずだ。
助かりたいと願うのなら方法はただひとつ。
この俺を倒せばいい。
だが、それは無理なことだとわかっているが故にあまりにも酷な話だ。
ハルはゆっくりと斜め後ろ、その人物がひそんでいるであろう木の茂みを振り返る。
ひっ、と小さな悲鳴をもらす声と、かさりと木の葉が擦れ合う音。
間違いなく最後のひとりはそこにいる。
哀れなほどに怯えながら。
それでも、もはや逃げられないと決意を固めたのだろう。
「う、うあーっ!」
ハルが視線を向けた茂みから、その人影が勢いよく飛び出してきた。
叫びを上げるその声は、まだ子どもの声であった。

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