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令嬢は元暗殺者に恋をする
第78章 戦い -4-
「サラ」

 少年に視線を据えたまま、何も言うな、とサラをとどめる。

 ハルの厳しい口調にサラは息を飲み、その場に硬直する。

 ここで、サラが必ず止めに入るだろうことはわかっていたはずなのに、自分を傷つけた相手の顔が見てみたいなど、へたな好奇心など起こすべきではなかったと、少しばかりの後悔が頭をもたげる。

 だが、心のどこかで殺すには惜しいと思う気持ちもあったことは正直、否めない。

「だめ! その子を殺してはだめ!」

 声を振り絞るサラの声。

 その必死の叫びが耳をつく。

 何故、この少年をかばうのかと尋ねるのは愚問であろう。

「まだ子どもだわ! 私よりも小さい」

「小さくても、俺と同じ人殺しだ」

「そういう言い方はやめて!」

「事実だよ」

 辺りに横たわる無数の屍。
 大地を赤黒く染め、不快な血の臭気を漂わせて。
 彼らの命を奪ったのは自分。
 ためらいもなく殺した。
 命乞いをしてきた男も、戦意を喪失して逃げ出した者すらも容赦なく。
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