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令嬢は元暗殺者に恋をする
第78章 戦い -4-
「だめ!」

 たまらず、サラは飛び出し少年を背にかばい両手を広げる。
 唇をきつく噛みしめ、強い瞳でこちらを見上げて。
 かばわれた少年が驚いて目を丸くしたことはいうまでもない。

「サラ、どういうつもり?」

「見てのとおりだわ」

「どうして?」

「どうしても何も」

「おとなしく待っていてと言ったはずだよ」

「おとなしくなんかしていられるわけがないでしょう! それに、ハルだって、怪我をしている。早く手当をしないと」

「俺の怪我はたいしたことではないよ」

「でも!」

「さあ、そこをどいて」

 それでもサラは頑なに首を振るばかり。
 決してその場から退こうとはしない。

「言うことを聞いてくれるね、サラ」

 ね? と、首を傾げてハルは口許に笑みを作る。
 言い聞かせるような優しい声音。
 けれど、その穏やかな声の響きの影には、有無を言わせぬものがあった。

 お願いをしているのではない、強制だ。
 従わないのなら、たとえサラでも許さない。
 言うことをきかないのなら、こちらも手段は選ばないと。

 口調も態度もいつものハルと違うと、サラとて察しているはず。
 だが……。
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