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令嬢は元暗殺者に恋をする
第78章 戦い -4-
「ハルのばか……」

 いっそうのこと、サラを殺して自分も死んでしまおうか。
 そうすれば、離ればなれになる辛さを味わうこともないと、そんな負の感情さえちらりと脳裏を過ぎった。

 腕の中でいやいや、としきりに首を振るサラの頭を優しくなでる。
 ごめん、と言いたいのに、口にすることはできなかった。
 言ってしまったらサラの願いを受け入れてしまうことになる。
 そっと、サラの手がリボンの巻かれた右手に触れてきた。

「すべてが終わったら、ハルの手から返してくれると約束したわ」

 目の縁に大粒の涙をため、勢いよくサラが顔を上げた。

「なのに、こんなことをするハルなんて……」

 サラの泣きそうな顔に心が痛んだ。

「嫌いよ。ハルなんて嫌い!」

 ハルは静かにまぶたを伏せる。
 嫌いよ、と叫ぶサラの声が耳に反響する。

 胸が抉られた。
 あきらかに、動揺している自分に戸惑いを覚える。

 そもそも、今夜限りでサラと別れを告げるつもりだった。
 だから、むしろ嫌ってくれてもかまわない、その方がよかったと思っていたはずだったのに。

 なのに、心が痛くて胸が苦しい。
 サラを抱きしめる手が震えた。
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