この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第80章 戦い -6-
「聞こえなかったのか。乗れ」
「いやだ……」
それでもファルクはいやだと首を振り、低く呻いた。そのひたいに、じっとりと汗がにじむ。
乗らないというなら、無理にでも乗せるだけ。
ハルはファルクの胸ぐらに手を伸ばしてつかみ、強引に立ち上がらせ問答無用で馬車の中へと放り込む。
「ひい、やめて! やめて、お願いやめて!」
そして、自分も馬車に乗り込み、後ろ手で扉を閉める。
「ま、ま……まっ、て……」
椅子の上で腰を抜かし、ファルクは情けない悲鳴をもらす。
「殺さないで」
「殺しはしない。いや」
酷薄な笑みがハルの口許に広がる。
「死んだも同然となるかな」
ハルの言う意味を理解することができず、ファルクは眉をしかめた。
これから自分の身に何が起きるのかと、不安そうに表情を強ばらせている。
ハルはふところから手のひらにおさまるほどの小袋を取り出し、口を縛っていた紐を解いて逆さにする。
砂にも似た茶色の細かな粒子が手のひらに落ちるのを、ファルクはただ呆然と眺めていた。
「それは……」
何だ?
と、口を開きかけたファルクの顔めがけて、ハルは手のひらにふっと息を吹きかけた。
辺りに粉がふわりと舞い上がり、たちまち甘い香りが馬車の中を満たした。
「いやだ……」
それでもファルクはいやだと首を振り、低く呻いた。そのひたいに、じっとりと汗がにじむ。
乗らないというなら、無理にでも乗せるだけ。
ハルはファルクの胸ぐらに手を伸ばしてつかみ、強引に立ち上がらせ問答無用で馬車の中へと放り込む。
「ひい、やめて! やめて、お願いやめて!」
そして、自分も馬車に乗り込み、後ろ手で扉を閉める。
「ま、ま……まっ、て……」
椅子の上で腰を抜かし、ファルクは情けない悲鳴をもらす。
「殺さないで」
「殺しはしない。いや」
酷薄な笑みがハルの口許に広がる。
「死んだも同然となるかな」
ハルの言う意味を理解することができず、ファルクは眉をしかめた。
これから自分の身に何が起きるのかと、不安そうに表情を強ばらせている。
ハルはふところから手のひらにおさまるほどの小袋を取り出し、口を縛っていた紐を解いて逆さにする。
砂にも似た茶色の細かな粒子が手のひらに落ちるのを、ファルクはただ呆然と眺めていた。
「それは……」
何だ?
と、口を開きかけたファルクの顔めがけて、ハルは手のひらにふっと息を吹きかけた。
辺りに粉がふわりと舞い上がり、たちまち甘い香りが馬車の中を満たした。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


