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令嬢は元暗殺者に恋をする
第81章 離さない、離れない
「離れないわ」
「ずっと、一緒にいたい」
「ずっと一緒よ。どうして、そんなことを言うの? 離れないのも一緒にいるのもあたりまえでしょう?」
ばかね、とサラは言い聞かせるように声を落とし、袖口でハルの涙を拭った。
「そんな顔をしないで」
脇に垂らしていたハルの手から剣が離れ落ちた。
ハルはがくりとその場に膝をつき、サラの腰に腕を回して抱きつく。
小刻みに肩を震わせるハルの唇から、こらえきれずに嗚咽がもれる。
「大丈夫よ」
ハルの頭を何度も優しくなで、サラは胸に抱え込む。
包み込むように優しく。
側にいたアイザカーンの少年は二人からそっと視線を外し背を向けた。
「ずっとハルの側にいるから。ずっと……この先何があったとしても、私たちは一緒。決して離れたりしないの。ね?」
そうでしょう?
優しい声が耳元に落ちる。
涙がとまらなかった。
こんな醜態をさらして……なのに、あふれる涙をこらえることができなかった。
「ハル、泣かないで。ううん……」
『泣きたいときは我慢をせずに泣きなさい。それは、あなたに人としての心が残っている証(あかし)なのだから』
組織にいた頃、レイがよく言ってくれた言葉が胸を過ぎっていく。
その言葉がささやくサラの声と重なった。
「泣いていいの」
「サラ……」
「うん」
何度も大丈夫よ、と繰り返しながら頭をなでてくれるサラの手が温かくて。
心地よくて。
ずっと求めていた安らぎ。
包み込んでくれる優しい手と温もり。
手放したくないと思った。
──もう、離れない。
──もう、離さない。
翌朝、カーナの森で廃人となり果てたファルクが発見された。
そして、ハルとサラ、二人の姿がカーナの森から消えた。
「ずっと、一緒にいたい」
「ずっと一緒よ。どうして、そんなことを言うの? 離れないのも一緒にいるのもあたりまえでしょう?」
ばかね、とサラは言い聞かせるように声を落とし、袖口でハルの涙を拭った。
「そんな顔をしないで」
脇に垂らしていたハルの手から剣が離れ落ちた。
ハルはがくりとその場に膝をつき、サラの腰に腕を回して抱きつく。
小刻みに肩を震わせるハルの唇から、こらえきれずに嗚咽がもれる。
「大丈夫よ」
ハルの頭を何度も優しくなで、サラは胸に抱え込む。
包み込むように優しく。
側にいたアイザカーンの少年は二人からそっと視線を外し背を向けた。
「ずっとハルの側にいるから。ずっと……この先何があったとしても、私たちは一緒。決して離れたりしないの。ね?」
そうでしょう?
優しい声が耳元に落ちる。
涙がとまらなかった。
こんな醜態をさらして……なのに、あふれる涙をこらえることができなかった。
「ハル、泣かないで。ううん……」
『泣きたいときは我慢をせずに泣きなさい。それは、あなたに人としての心が残っている証(あかし)なのだから』
組織にいた頃、レイがよく言ってくれた言葉が胸を過ぎっていく。
その言葉がささやくサラの声と重なった。
「泣いていいの」
「サラ……」
「うん」
何度も大丈夫よ、と繰り返しながら頭をなでてくれるサラの手が温かくて。
心地よくて。
ずっと求めていた安らぎ。
包み込んでくれる優しい手と温もり。
手放したくないと思った。
──もう、離れない。
──もう、離さない。
翌朝、カーナの森で廃人となり果てたファルクが発見された。
そして、ハルとサラ、二人の姿がカーナの森から消えた。

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