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令嬢は元暗殺者に恋をする
第82章 幸せを願う
「何か用か?」
相手は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに気まずそうに頭に手をあてる。
「いや……」
聞き取れるか取れないかの声で呟き、シンは肩を落す。
何か言いたげに口を開きかけたがすぐに閉じ視線を斜めに落とした。
「別に用ってわけでもないから……」
じゃあ、と歯切れ悪い口調で言い、背を見せて歩き出そうとするシンに、テオは肩をすくめて笑う。
いつぞやのあの不遜な態度はどこへやら、今日はずいぶんとおとなしい。
というか、しおらしい。
「入ったらどうだ」
テオは扉を大きく開け放ち中に入るようシンをうながした。
迷う素振りを見せたものの断る理由も特になかったのか、いや、むしろ聞きたいことがあったのだろう、シンは素直に診療所へと足を踏み入れた。
テオは残った後片づけに取りかかる。
一方、シンは所在なげに立ちつくしていたが、手近にあった椅子を見つけそこに腰を降ろした。
長い足を持て余しげに座り、落ち着かなさそうに肩をすぼめ、きょろきょろと視線をさまよわせる。
特に会話を交わすわけでもなく、あるいは互いにどちらからか口を切るのを待っているのか、無言の時間が流れていく。
相手は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに気まずそうに頭に手をあてる。
「いや……」
聞き取れるか取れないかの声で呟き、シンは肩を落す。
何か言いたげに口を開きかけたがすぐに閉じ視線を斜めに落とした。
「別に用ってわけでもないから……」
じゃあ、と歯切れ悪い口調で言い、背を見せて歩き出そうとするシンに、テオは肩をすくめて笑う。
いつぞやのあの不遜な態度はどこへやら、今日はずいぶんとおとなしい。
というか、しおらしい。
「入ったらどうだ」
テオは扉を大きく開け放ち中に入るようシンをうながした。
迷う素振りを見せたものの断る理由も特になかったのか、いや、むしろ聞きたいことがあったのだろう、シンは素直に診療所へと足を踏み入れた。
テオは残った後片づけに取りかかる。
一方、シンは所在なげに立ちつくしていたが、手近にあった椅子を見つけそこに腰を降ろした。
長い足を持て余しげに座り、落ち着かなさそうに肩をすぼめ、きょろきょろと視線をさまよわせる。
特に会話を交わすわけでもなく、あるいは互いにどちらからか口を切るのを待っているのか、無言の時間が流れていく。

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