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令嬢は元暗殺者に恋をする
第83章 王女アリシア
軽やかに窓から飛び降り庭園に立ったハルはもう一度上空を仰ぎ見る。
アルガリタの王女、アリシアの住まう白亜の宮殿は、落ちる残照に赤く染まっていた。
バルコニーの手すりから眼下をのぞき込むようにしてアリシアがこちらを見下ろしていた。
「アリシア、そんなに身を乗り出したら危ないよ」
しかし、アリシアは大丈夫だというように首を振る。
「ハル、また会いにきてくれるか?」
その声はどこか切実であり、哀願がにじんでいた。
味方の少ないこの宮殿で、心を許せる友人もなく、実の母に殺されるかもしれないという不安に怯えて暮らし、本当は寂しく心細いのだろう。
ハルはもちろんだ、と片手をあげた。
「ハル!」
再びの呼びかけに、ハルはもう一度アリシアを見上げる。
「ハル、気をつけて……」
その声は不安に揺れていた。
アリシアの言う気をつけてとは、今回の件で女王であるイザーラが何かを仕掛けてくる可能性があるかもしれないという心配の意味だ。
なきにしもあらずだろう。
「俺は大丈夫だ。アリシア、何かあったらすぐに俺を呼べ。必ず力になってやる」
アリシアは嬉しそうに顔をほころばせた。
「引き止めてすまない」
「いや」
組織を抜けこのアルガリタへと辿り着き、王女である彼女と出会ったのもまた不思議な運命。
もし、この国に立ち寄ることがなければ、あたりまえのことだが出会うことがなかったのだから。
暮れゆく空を見上げ、ハルは瞳を揺らした。
アルガリタの王女、アリシアの住まう白亜の宮殿は、落ちる残照に赤く染まっていた。
バルコニーの手すりから眼下をのぞき込むようにしてアリシアがこちらを見下ろしていた。
「アリシア、そんなに身を乗り出したら危ないよ」
しかし、アリシアは大丈夫だというように首を振る。
「ハル、また会いにきてくれるか?」
その声はどこか切実であり、哀願がにじんでいた。
味方の少ないこの宮殿で、心を許せる友人もなく、実の母に殺されるかもしれないという不安に怯えて暮らし、本当は寂しく心細いのだろう。
ハルはもちろんだ、と片手をあげた。
「ハル!」
再びの呼びかけに、ハルはもう一度アリシアを見上げる。
「ハル、気をつけて……」
その声は不安に揺れていた。
アリシアの言う気をつけてとは、今回の件で女王であるイザーラが何かを仕掛けてくる可能性があるかもしれないという心配の意味だ。
なきにしもあらずだろう。
「俺は大丈夫だ。アリシア、何かあったらすぐに俺を呼べ。必ず力になってやる」
アリシアは嬉しそうに顔をほころばせた。
「引き止めてすまない」
「いや」
組織を抜けこのアルガリタへと辿り着き、王女である彼女と出会ったのもまた不思議な運命。
もし、この国に立ち寄ることがなければ、あたりまえのことだが出会うことがなかったのだから。
暮れゆく空を見上げ、ハルは瞳を揺らした。

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