この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
令嬢は元暗殺者に恋をする
第7章 ハルの真意
絶対に負けるはずがない。
そう思いながらも、私は不安な日々を過ごしました。
私はどうしてもこの大任を彼には譲りたくはなかった。
彼女を私のものにしたかった。
そこで、私は試験の前日、友人を飲みに誘いました。
どちらが選ばれても恨みっこなしだと笑って彼に言いながら、私のとった行動は……卑怯にも、彼の酒杯に睡眠薬を混ぜたことなのです。
テオは息をするのも忘れたかのように、ただ黙って師の告白に耳を傾けていた。
「翌朝、当然のことながら彼は試験場には現れませんでした。そうして、私は望んでいた王家専属医師という役目をまんまと手中にしたのです。対して、友人は試験に現れなかったことを咎められ、医師の資格を剥奪され、このアルガリタを追われる羽目となりました」
そこで、ベゼレートは声を低く落とす。
「最後に見た彼の目は今でも忘れることはできません。彼は私を恨むわけでもなく、ましてや責めるわけでもなく、ただじっと悲しそうな、私を哀れむような目を向けて……」
「その……友人と彼女は?」
「どこか遠い地で、二人仲良く暮らしていると、噂で聞きました」
そうですか……と、テオは小さく呟いた。
「見損ないましたか私を……偉そうなことを言いながらも、私はこういう人間だったのですよ。本当はあなたに尊敬されるに値しない人間なのです」
テオは言葉もなく、ただ首を振るばかりであった。そして、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「先生。少し考えたいことがありますので今夜は……」
「そうですか。テオ、自立の件もこの機会に考えてみて下さい」
はい……と、小声で呟きテオは扉へと向かって歩き出した。
一度だけ振り返り師の後ろ姿を見る。
テオの碧い瞳が揺れ動いた。
師の背中はこんなにも小さかっただろうかと。
そして、その日の深夜。
もう一人、ベゼレートの部屋を訪れる者がいた。
そう思いながらも、私は不安な日々を過ごしました。
私はどうしてもこの大任を彼には譲りたくはなかった。
彼女を私のものにしたかった。
そこで、私は試験の前日、友人を飲みに誘いました。
どちらが選ばれても恨みっこなしだと笑って彼に言いながら、私のとった行動は……卑怯にも、彼の酒杯に睡眠薬を混ぜたことなのです。
テオは息をするのも忘れたかのように、ただ黙って師の告白に耳を傾けていた。
「翌朝、当然のことながら彼は試験場には現れませんでした。そうして、私は望んでいた王家専属医師という役目をまんまと手中にしたのです。対して、友人は試験に現れなかったことを咎められ、医師の資格を剥奪され、このアルガリタを追われる羽目となりました」
そこで、ベゼレートは声を低く落とす。
「最後に見た彼の目は今でも忘れることはできません。彼は私を恨むわけでもなく、ましてや責めるわけでもなく、ただじっと悲しそうな、私を哀れむような目を向けて……」
「その……友人と彼女は?」
「どこか遠い地で、二人仲良く暮らしていると、噂で聞きました」
そうですか……と、テオは小さく呟いた。
「見損ないましたか私を……偉そうなことを言いながらも、私はこういう人間だったのですよ。本当はあなたに尊敬されるに値しない人間なのです」
テオは言葉もなく、ただ首を振るばかりであった。そして、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
「先生。少し考えたいことがありますので今夜は……」
「そうですか。テオ、自立の件もこの機会に考えてみて下さい」
はい……と、小声で呟きテオは扉へと向かって歩き出した。
一度だけ振り返り師の後ろ姿を見る。
テオの碧い瞳が揺れ動いた。
師の背中はこんなにも小さかっただろうかと。
そして、その日の深夜。
もう一人、ベゼレートの部屋を訪れる者がいた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


