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令嬢は元暗殺者に恋をする
第86章 思いがけない、つかの間の再会
 青年の手にしたリボンの端がひらひらと風になびいて揺れる。

「すみません」

 慌ててサラはリボンを手にする青年の元に走り寄った。
 そして、青年を見上げサラは口を開けてその場に固まってしまう。
 いや、思わずその青年に見とれてしまったという方が正しいかもしれない。
 すらりとした細身の長身。
 細面の整った顔に透き通るような白い肌。
 瞳は鮮やかな翡翠色。
 穏やかな雰囲気と、優しげな面差し。
 腰には二本の剣。
 剣を扱うような感じの人にはまったく見えない。

 あ、でもそれをいうならハルだってそうよね。
 それにしても、綺麗な人……。
 この国の人ではないわ。
 もしかして、レザンの人。
 年はファルクと同じくらいかしら。
 二十歳半ばくらい?
 でも、ファルクとは全然違う。落ち着いた雰囲気で大人の男の人って感じ。
 あれ? でも私、この人とどこかで会ったような気がするのは気のせいかしら。
 どこで……?

 青年は手にしたリボンをサラに手渡した。
 ほっそりとしたしなやかな指先から、するりと藍色のリボンが抜けていく。
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