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令嬢は元暗殺者に恋をする
第86章 思いがけない、つかの間の再会
「あの……ありがとうございます」
たどたどしくレザン語で礼を言うサラに、青年は目元を和らげふわりと微笑む。
その微笑みにサラは思わず頬を赤くしてしまった。
レザンの人間をこの国でみかけるのはまれであるのに、サラには目の前の青年がハルのいた組織の者かもしれないということは、少しも疑うことはなかった。
「どういたしまして」
と、相手もレザンの言葉で返してきた。
落ち着いた口調に優しい声音。
サラの胸がとくんと鳴る。
わあ! 私、ハル以外のレザンの人と会話してる。ちゃんと通じてるみたいだわ。
「あの……えっと、レザン・パリューの、人、ですよね?」
「ええ、そうですよ」
やはり、たどたどしいサラの問いかけに、青年はかわらない笑みを浮かべたまま答える。
「えっと……」
言葉が通じたことが嬉しくて、もっと話をしてみたいと思ったのに、残念なことに、今のサラでは相手と会話を繋げていくことは難しかった。
結局、それ以上言葉が続かなくなってしまい、サラはどうしようと視線を泳がせる。
頭の中が混乱する。
それでも、何か喋らなければと焦ったサラの口から出た言葉は。
「こんにちは」
ただの挨拶でだった。
それが精一杯であった。
やっぱり無理だわ。
片言だって会話を続けるのは無理。
「こんにちは、お嬢さん。レザン語がお上手ですね」
青年はゆっくりと、サラにも聞き取れるように挨拶を返した。
サラのレザン語は上手というにはほど遠いのだが、まったく嫌みに聞こえないのが不思議であった。
サラはもう一度ありがとうございますと言って頭を下げる。
そこへ。
「こんにちはー」
突然、ひとりの少年が首を傾けながらひょっこりと横から現れた。
おそらく年はハルと同じくらい。けれど、にこにこ笑った顔はまだどこか幼さを残した感じである。
小柄で銀髪の髪に色素の薄い石灰色の瞳が特徴だ。
少年の登場にすぐに反応したのはキリクであった。
キリクはサラが挨拶を返すよりも早く、厳しい顔でサラをかばうように少年の前に立つ。
たどたどしくレザン語で礼を言うサラに、青年は目元を和らげふわりと微笑む。
その微笑みにサラは思わず頬を赤くしてしまった。
レザンの人間をこの国でみかけるのはまれであるのに、サラには目の前の青年がハルのいた組織の者かもしれないということは、少しも疑うことはなかった。
「どういたしまして」
と、相手もレザンの言葉で返してきた。
落ち着いた口調に優しい声音。
サラの胸がとくんと鳴る。
わあ! 私、ハル以外のレザンの人と会話してる。ちゃんと通じてるみたいだわ。
「あの……えっと、レザン・パリューの、人、ですよね?」
「ええ、そうですよ」
やはり、たどたどしいサラの問いかけに、青年はかわらない笑みを浮かべたまま答える。
「えっと……」
言葉が通じたことが嬉しくて、もっと話をしてみたいと思ったのに、残念なことに、今のサラでは相手と会話を繋げていくことは難しかった。
結局、それ以上言葉が続かなくなってしまい、サラはどうしようと視線を泳がせる。
頭の中が混乱する。
それでも、何か喋らなければと焦ったサラの口から出た言葉は。
「こんにちは」
ただの挨拶でだった。
それが精一杯であった。
やっぱり無理だわ。
片言だって会話を続けるのは無理。
「こんにちは、お嬢さん。レザン語がお上手ですね」
青年はゆっくりと、サラにも聞き取れるように挨拶を返した。
サラのレザン語は上手というにはほど遠いのだが、まったく嫌みに聞こえないのが不思議であった。
サラはもう一度ありがとうございますと言って頭を下げる。
そこへ。
「こんにちはー」
突然、ひとりの少年が首を傾けながらひょっこりと横から現れた。
おそらく年はハルと同じくらい。けれど、にこにこ笑った顔はまだどこか幼さを残した感じである。
小柄で銀髪の髪に色素の薄い石灰色の瞳が特徴だ。
少年の登場にすぐに反応したのはキリクであった。
キリクはサラが挨拶を返すよりも早く、厳しい顔でサラをかばうように少年の前に立つ。

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