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令嬢は元暗殺者に恋をする
第86章 思いがけない、つかの間の再会
「ハルが言ってた。目立つところに入れ墨をいれている奴ほどやばいって!」
キリクはぎりっと奥歯を噛む。
「俺……サラを守るって言ったのに、何もできなかった。あいつに睨まれただけで足がすくんで一歩も動くことができなくて。怖くて。それどころか、頭をなでられて。俺……」
「キリク……」
「俺、情けないよ! 何が以前よりも強くなってる気がするだよ! 全然、あいつに勝てる気がしなかった!」
うなだれるキリクの足元にぱたぱたと涙が落ちる。
サラは落ち込んでいるキリクの手をつないだ。
「帰ろう。ね?」
それでも身を挺して自分をかばおうとしてくれたキリクは頼もしいと思った。
だけど、今のキリクに何を言っても慰めにもならないだろう。
キリクの手を引いてサラは歩き出す。
泣きながらキリクもついてくる。
「あのね、キリク。このことはハルに内緒にして」
「どうして! あの男に言われたからって素直に従うのか?」
「たぶん、あの人たちは大丈夫だと思うの。私たちに危害を加えたりはしない」
「そんなのどうだか!」
「それに、今はハルによけいな心配をかけたくないの。キリク、お願い」
真剣なサラの表情にキリクは口をつぐんでしまった。
そして、わかったよ、と呟く。
「ありがとう、キリク」
「……俺、今日はこのまま自分の家に帰るよ。こんな顔ハルに見せられない。泣いてたのすぐばれてしまう」
「そっか……じゃあ、後で夕飯届けてあげるからね」
サラはもう一度、二人が立ち去った方向を見やる。
「レイ……」
遠ざかっていくレイの背中を見つめ、サラはその名を呟いた。
レイ……またあなたに会える?
キリクはぎりっと奥歯を噛む。
「俺……サラを守るって言ったのに、何もできなかった。あいつに睨まれただけで足がすくんで一歩も動くことができなくて。怖くて。それどころか、頭をなでられて。俺……」
「キリク……」
「俺、情けないよ! 何が以前よりも強くなってる気がするだよ! 全然、あいつに勝てる気がしなかった!」
うなだれるキリクの足元にぱたぱたと涙が落ちる。
サラは落ち込んでいるキリクの手をつないだ。
「帰ろう。ね?」
それでも身を挺して自分をかばおうとしてくれたキリクは頼もしいと思った。
だけど、今のキリクに何を言っても慰めにもならないだろう。
キリクの手を引いてサラは歩き出す。
泣きながらキリクもついてくる。
「あのね、キリク。このことはハルに内緒にして」
「どうして! あの男に言われたからって素直に従うのか?」
「たぶん、あの人たちは大丈夫だと思うの。私たちに危害を加えたりはしない」
「そんなのどうだか!」
「それに、今はハルによけいな心配をかけたくないの。キリク、お願い」
真剣なサラの表情にキリクは口をつぐんでしまった。
そして、わかったよ、と呟く。
「ありがとう、キリク」
「……俺、今日はこのまま自分の家に帰るよ。こんな顔ハルに見せられない。泣いてたのすぐばれてしまう」
「そっか……じゃあ、後で夕飯届けてあげるからね」
サラはもう一度、二人が立ち去った方向を見やる。
「レイ……」
遠ざかっていくレイの背中を見つめ、サラはその名を呟いた。
レイ……またあなたに会える?

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