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令嬢は元暗殺者に恋をする
第87章 あなたの瞳におちて
「夢みたい。ハルとおそろいの食器にカップ。カーテンもクッションも、どれもみんな素敵!」

 食器や調理器具、日用品などなど、これから二人で生活するために街で買いそろえてきたものをテーブルに広げ、それらを手にとってサラは機嫌よくはしゃいでいる。
 街で買い物もそうだが、好みのものを選んで自分で買うのはサラにとっては初めてで、よほど楽しかったのか、始終、嬉しそうににこにこと笑っていた。

「お花の苗もたくさん買ったから、明日さっそく鉢植えに植えかえてみようと思うの。うまくできるかしら」

「俺も手伝うよ」

「ハルも? ほんとう?」

 目を輝かせるサラにハルは笑ってうなずく。

「それに、可愛いお洋服や靴とか小物までたくさん。ありがとう、ハル」

 サラは膝に置いていた白いうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

 これも今日、街でハルに買ってもらったものだ。

「サラが喜んでくれて俺も嬉しいよ」

「でも、こんなにいっぺんにたくさん買ってもらって……その……」

 サラは言いにくそうに言葉を濁して、ぬいぐるみの頭をなでる。
 どうやら、お金の心配をしているようだ。
 大貴族の令嬢だったとはいえ、サラには自由になるお金はなかった。
 当然のことながら、屋敷を出たときも無一文。
 ファルクとの結婚式に身につけていた宝石類は小箱に入れて衣装箱の奥深くにしまった。
 そんなものに未練はなかったから、これらを売ってお金に換えようと思ったのだが、ハルがそうした方がいいと言ったからだ。

「そのことだけどね。ちゃんと言わなければって、思っていたんだ」

 ハルは一拍おいて続けた。

「お金はたくさんあるんだ。組織を抜けるときに、レイがあらかじめ根回ししていてくれて、アルガリタのとある教会に預けてくれた。俺がアルガリタについて訪ねてきたら、渡すようにと」

「ハルのお師匠さまが?」

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