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令嬢は元暗殺者に恋をする
第88章 あなたの瞳におちて -終- ※
「……ふっ……」

「泣いてるの?」

 目の縁にたまった涙にちゅっと口づけされる。

 手も声も気遣うような優しさだが、自分を貫くハルの男の象徴は抱いている女性を屈服させようという強固な意志を持って絶えず蠢く。

「ち……違う……の、すごく嬉しくて……幸せで。ハルがとても優しくて……」

 途切れ途切れにサラは声を発する。

「ほんとうは、壊したいくらい滅茶苦茶に愛したいんだけどね。ぎりぎりのところでこらえてる」

「ぎりぎり……?」

「理性を失ったら一方的にサラを抱いてしまいそうで怖い。きっと、いや、間違いなくサラを壊してしまう」

 サラはふっと息を飲む。
 ハルになら壊されてもいいという期待がさっと胸をかすめていく。

 そうなったら、自分はどうなってしまうのだろう。

 今はまだ抱かれ慣れていない自分の身体を気遣ってくれているハルの理性を崩したら、彼はいったいどうなるのだろう。
 まるで、サラの心情を読み取ったかのように、ハルはくすっと笑った。

「試してみる? 本当に壊すよ。俺、容赦できないかもしれない」

 ハルのその言葉に胸がどきりと鳴った。

「……ハルになら、壊されてみたい」

 ハルの手が愛おしげにサラの頬を撫でる。

「可愛いね。でも、あまり俺を煽らないで」

「ほんとうよ……」

「嬉しいよ。でも、まだサラには無理。それに、身体がついてこないから、ただつらいだけだよ。もう少し、俺に抱かれることに慣れてからね」
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