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あの頃に戻って……
第4章 美容室
「優輝くん……」

「ん?」

「……手……」

「あ!やだ?」

「ううん。」

「危なっかしいから、繋いでいようかと……」

「もう。子どもじゃないんだから。」

彼のそんな言動にますますドキドキする。

「照れ隠しだよ。」

「え?」

「ヤバい……俺、おかしい。」

「どうしたの?」

私もおかしいの。でも、なかなか同意はできない。

優輝くんが私に特別な感情を抱くなんて思えないし。

昔好きだった人にまた会えたから、嬉しいだけ。

そうだよね?私!

なのに……

「思春期真っ只中のガキじゃないのに……すっげぇ……緊張する。」

なんて……

ドキドキしてるのは私だけじゃないって教えるみたいに言うから……

「美都は、緊張しない?」

なんて答えたら良い?

平気!って強がる?

でも、優輝くんの素直さにも疑問を抱いてる。

「緊張するよ。旦那とも手なんて繋がないもの。」

素直になってみた。

「昔話しても良い?」

私の答えに頷いたあと、そんなことを聞いた。

「?うん。」

会場まであとわずか十数メートル……路地裏の少し暗い通りに日が射し込む。

足を止めて、向かい合う。

「昔……俺は佐野美都のことが好きだった。」

彼は確かにそう言った。

「ウソ?!」

心拍数が駆け足になるのが分かる。

「昔……な。」

「昔……ね……。私も……好きだった。優輝くんのこと。」

「マジ?」

「(コクン)」

「昔……だよな?」

「(コクン)」

今のこのドキドキは……何だろう?

でも、私には不倫なんてできない!

そうよ。昔のことよ。



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