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わけありっ、SS集!
第4章 ままごと遊び

 そう言って、右手に包丁を持ったまま振り向く。忍は小柄で一見女の子のようにも見える男の子だった。黒髪で黒目で、着物が映えそうな顔立ちの。
 俺の幼馴染み兼、忍曰く、第二の母親なんだと。
 ちなみにターちゃんとは俺のことで、本名は隆之(たかゆき)。小さい頃から忍は俺をターちゃんと呼んでいた。

「ほら、スマホ」

 拾って差し出されるそれを、俺は無言で受けとる。

「お味噌汁と目玉焼きと鮭だよ、今日の朝ごはん」
「いらな……」
「だめっ! 今日の講義一限からでしょ? ちゃんと食べないとエネルギー持たないよ! 早く顔洗ってきて!」

 返事も待たず、俺に背を向ける忍。
 ……たく。言うことまで死んだ母親に似てきやがって。あーイラつく。

 母が死んだ数日後。こいつはいきなり俺の家に転がり込んできやがった。そして毎朝母の代わりに、台所に立つようになった。
 中二の六月から、今日まで……、大学二年の春まで、約六年間ずっとだ。

「あ、そうそう、期末の試験だけどね……レポートのやつと……」
「うるせー」
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