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向日葵
第10章 人妻の彼女
 「タイはさ、すみれも知っていると思うけど、仏教の国なんだよ。
気候は温かくて、人も穏やかだった。
観光でエメラルド寺院を見たの。
エメラルドに輝くお寺って意味があるらしい。
立派なお寺でさ…
添乗員さんに案内されて巡ったんだけど、タイには階級みたいなものがあるのよ。
未だに貧富の差もある。
タイのお坊さんは階級が上なんだって。
男の子が生まれてお坊さんを志願すると、親は凄く喜ぶそうよ。
かなり名誉な事みたい。
だってそうよね……
俗世間と縁を断ち切り、仏の道に一生を捧げるんだもん。
勿論、結婚もしない。
上の階級も与えられて、人々から尊敬もされる。
凄い事なんだよね…
エメラルド寺院には猫が居るんだよ。
お坊さんが可愛がってペットにしているんだ。
女からも縁を断つんだもん。
可愛がる何かが欲しいよね…
高い階層の僧侶の傍に猫が寄り添っていた。
すみれを思い出したよ。
私が来世タイに生まれたら、すみれに寄り添って貰おう。
無駄な性など捨てて、猫を可愛がる僧侶になるのも悪くないね。
間違いなく、陽だまりの中に居れるよ。
親孝行しながらさ…」


 「葉月…」

 「さて、冷めないうちにグリーンカレーも召し上がれ!
身体が温まるよ!
やみつきになって、作ってみたよ!
ナンまでは焼けないから、近くのパン屋さんで調達してきた」

 貴女の切ない気持ちが届く。
辛いもの得意じゃないけど頂くわ。

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