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向日葵
第11章 想い愛
 夕方から塾の講師のバイトに入る。
大学の時に何気なく取った教員免許がこんな時に役立つとは思わなかった。
生活費はバイトで補っていた。
まだまだ作家なんて言っても名ばかり。
それでも、小説を書く時間を確保し、忙しくしている方が気が紛れる。

 私の目の前には、受験という戦地に送り出される戦士達が、輝かしい未来を夢見て、黒板に書き出される文字や数字をノートに必死に写していた。
微分積分、二次関数、ベクトルよりも大事な事は世の中に沢山ある。
でも、そんな事に構っていられる余裕も今はない。
人は皆、何かを犠牲にする時間を定められて生きている。
それを可哀想なんて思ったらいけない。
自分にとって意味があるかないが分かる程の賢さが備わっていたなら、考える事など辞めてしまい、生きる事すら無意味に感じてしまうだろう。

 生きる意味は人それぞれ。


 ノートを必死に取り、ペンを動かす生徒達の音が私の耳に木霊する。

 なんの為に勉強するのか?
その意味も自分にしか分からない。
その答えも自分で探さなきゃ、意味のないものとなってしまう。


 目の前に必要とされたものを置かれて、必死になれる時こそ、自分の魂は潤うのではないかって思うよ。



 ねっ、葉月

 

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