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明治鬼恋慕
第8章 城下町

軒先の女将は彼の催促に怪訝( ケゲン )な顔でこたえた。

いったい何のつもりなのかと怪しみながら、着物の入った別の籠を指差す。

さっそく焔来が受け取ろうとした時

──彼の腕を、リュウが引き止めた。


「止めるなよ、いいだろ? 試すくらい」

「……」


悪戯心満点な笑みで振り返った焔来を無視して、リュウは女将に声をかけた。


「女将さん。…僕、少し気分が優れないみたいなんだ。どこか休める場所を貸して頂けませんか?」

「はぁ? 急にどうした」

「お願いします…」


緑の虹彩を潤ませて、大げさに息を吐きながら上目遣いで視線を送る──。

ついでに胸に手を当てて、くっと眉間にシワを寄せれば、なまめかしい病人のできあがりだ。


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