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明治鬼恋慕
第8章 城下町

気の強そうな店の女将も、これには一瞬で騙された。

箱階段を上った奥の間に、今は使っていない部屋がある──盗みだけはよしてくれよと念を押して、快く部屋を貸してくれた。


「感謝します。行こうか、焔来」

「え、ちょ、なんで?」


掴んだ腕をそのまま引っ張られ、わけもわからず焔来は二階へと連行される。

他の客たちに見まもられながら、選んだ着物を片手に箱階段を上がった。




──



「どうした? いきなり気分が悪いとか──ッッ」

「……シッ、静かに」


二階へ上がり、奥の畳間に入った二人。

後ろ手に障子を閉めたリュウは、焔来の身体を畳のうえに縫いつけた。


「おいおい怒ったのか? あんなのおふざけだろっ」


リュウにのしかかられて身動きの取れなくなった焔来が、苦く笑いながら抗議する。


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