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聖杏学園シリーズ ー囚われの少女達ー
第9章 盗撮 編 3-1 コスプレ
オーダーが届いた後で、モデルのことだけど・・・と話を切り出した。

「名前を言って無かったね、俺は大石健太、高2だよ。えっと・・」
「私は、佐々木来瞳、同じ高2です」
2人は思わず笑みを浮かべた。

「クルミ?へえ~珍しいね。クルミって名前は初めて聞いたよ。でもぴったりで可愛い名前だね」
「そう・・・かな?・・・わかんないよ・・・」

そっけない返事を返し俯くが、来瞳の口元は緩んでいる。

凛とした瞳で大石を見つめてきた美少女の来瞳と、可愛らしい仕草を見せる来瞳。
どちらも魅力的だった。

大石はすかさず褒める。

「その表情、いいね!そんな風に顔を赤くして俯かれたら、男子だってキュンってなっちゃうよ。そんな可愛い仕草の、色んな表情の来瞳ちゃんも、撮っていきたいんだ。
いいかな?いいよね?よし、今一枚撮ってみよう。はい、視線はここだよ!」

「えっ えっ? 何?」

いきなり大石が差し出した左手を反射的に見てしまう来瞳。
斜め上にある握られた手を見つめた時、大石は右手で構えたコンパクトカメラで来瞳の斜め前からの横顔を撮影した。

突然の事で呆気にとられて、目をパチパチしていた来瞳がジッと見つめてきた。
柔らかな瞳がシュッとシャープなイメージに切り替わる。

「また無断で撮影して!私、写真を取られるのは好きだけど、無断で撮られるのは好きじゃないの!
もうやめてください!」

小さな声でもはっきりした抗議に、大石は誠実に対応した。

「分かった。もうしないよ、ごめんなさい・・・でも、これを見て」

今、撮ったばかりの来瞳の写真をモニターに映し、差しだす。

「ほら、こんな表情してたんだよ」
「・・・あっ・・・恥ずかしいけど・・・でも嬉しい」

流石に自分の表情のアップを見て、可愛いとは言わなかったが、来瞳は目を細めて見つめている。
斜め上を見上げているから、瞳が更に大きくはっきり映り、鼻筋が通っているから斜め横から撮影しても顔の印象が変わることは無い。窓から差し込む光がカーテンを通して柔らかくなり、優しく来瞳を包んでいた。

「こんな雰囲気の写真も好きです、ありがとう」
そう言って、ニッコリ笑ってカメラを返す来瞳の手が、受け取った大石の手と軽く触れあったが、何事もなかったようにしているのが、大石は嬉しかった。
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