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第13章 地下アイドルの秘密　編　１－１

本当は胸の谷間に顔を押し付けられるくらい抱き着きたかったけれど、我慢しました。でも後で２人きりになれたら思い切り甘えたい、その気持ちがどんどん膨らんでいきます。
審査委員長からは、お客さんへの魅せ方、アピールが上手いこと、そして今の実力だけではなくこれからの伸び代に期待が持てるから、が受賞の大きな理由だと説明がありました。
更に、ＣＤデビューに向けてこれからも頑張って欲しい、と言葉があり、歓声の上がった客席にメンバー全員で手を振って応えます。

興奮が冷めないまま楽屋に戻った私達をマネージャーが待ち構えていました。
「ようやくメジャーからＣＤデビュー出来るところまでたどり着いたな」
おめでとう、と笑顔で言ってくれた後は、いつもの冷静な口調で淡々とこれからの事を説明していきます。
「スタートラインに立てただけだから、気を抜かない様に。それから、発売に合わせて同時に進めないといけない事もあるし、その先の仕事の事もあるから、与えられた役割をしっかりとこなすこと。いいな」
はい、と元気よく返事をしても、マネージャーの言葉に私は浮かれていた気持ちが少しずつ沈んでいくのを感じました。
直接的な表現はしていなくても、出来ることは何でもしていこう、と決めたあのことを言っている気がします。

特別賞も私達を合格させるために・・・ひょっとして審査委員長や他の力のある人に対してメンバーの誰かが・・・

「・・・過去は振り返るな。選ばれた以上は、これから先の事に全力を尽くす
義務があるぞ。デビューのチャンスを貰っただけだからな」
自分の事を言われたのかと思ってドキリとした私とマネージャーの目が合いま
した。
「と、言うことで・・・さっそくこの後２時間の声楽のレッスンを入れておいた。すぐに支度をして車に集合だ。以上」
そう告げるとそそくさとマネージャーが楽屋を出ていきました。

静かな溜息が楽屋に漏れます。
「今日は打ち上げくらいやりたかったね」
舞風がポツリと言いました。その途端ドアが勢いよく空いて、マネージャーがひょっこりと顔を覗かせます。
「忘れていた・・・レッスンが終わったら焼肉に行くぞ。お腹が空いて倒れるくらい声を出して来い。以上」
楽屋に歓声が響く中で私は、前向きにいかなきゃ、と思っていました。
もう先に進むしかない、と。