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小鳥遊医局長の憂鬱
第5章 年の功
「あなた達は聞いて無いと思うけれど…。」

春は先ほど起こった出来事を掻い摘んで説明すると、ふたりとも暗い表情となった。

「トーコのことだから、笑って誤魔化していたんだと思うわ。でも、子供達の前で言われたら流石に私も黙っていられなかったの。ごめんなさいね静さん。」

春は素直に謝った。

「でも、どうして春さんは高鍋さんと浜田さんのお家の事情をご存じだったんですか?」

今泉は不思議そうに聞いた。もしかしたら、春のことだから、探偵でも雇って事前に色々調べていたのかも知れないと思った。

「あら…そんなの知らないわよ。」

春はチョコレートの包装を破いて、欲しがる華にひとつあげながら笑った。

「えっ…でも。」

チョコレートを貰って満足したのか、華は今泉に抱っこをせがんだので、抱き上げた。

「女も30を超えると誰だってちょっとした事情や秘密のひとつやふたつはあるものでしょう?家族の問題なんてどの家庭にもあることだから。」


「…ってことは…。」

今度は小鳥遊が春に聞いた。

「ええ…ハッタリに決まってるじゃない。亀の甲より年の功ね。でも名前が判ったから本当に調べても良いかも知れないわね。」

それを聞いて今泉と小鳥遊は声を出して笑った。

「いつもは、何も言わないトーコさんに脅されたんだから、相手は今頃どんな秘密を知られたのかビクビクしていると思うよ。相手が春さんだったのが運のつきだね。」

今泉は静かに言った。

「でも…やはり、このことはきちんとトーコに話しておいた方が良いと思うの。私達だけなら良いけれど、子供達が標的になることだってこれからはあるかも知れないでしょう?特に静さんは…誰にでも優しいから。」

春が真面目な顔で言うと、小鳥遊が考え込んでいた。

「どちらにせよトーコさんには確認しておく必要がありそうですね。」

冬が、着替え終わり向こうからやって来るのが見えた。

「ええ。きちんと話し合って頂戴ね。子供達に何かあってからでは遅いから。」


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