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小鳥遊医局長の憂鬱
第8章 お留守番
「今日は月性師長さんもうお掃除に来ましたよ?」

事務員がお茶を持って来て小鳥遊に言った。確かに周りを見回してみると、本や出しっぱなしだった資料などが、綺麗に整頓されていた。

「いつ頃来たんですかね?」

「今日は日勤の前でしたから随分お早かったですよ?」

事務員は、今日の予定を確認して去っていった。小鳥遊は、仕方なく冬をいつものように呼び出すことにした。暫くすると、設楽がやってきた。

「師長は今手が離せないので、私が代わりに伺いましたが、ご用件は何でしょう?」

…やられた。

小鳥遊は、どうでも良い書類を冬に渡して貰うように設楽に頼んだ。

…まだ怒っているのか。

病棟では普通に接したが、ふたりきりになることは無かったし、院内携帯に掛けても出なかった。夜も変わらず、夕食をひとりで食べ、ひとりで寝室へと向かった。小鳥遊が水を飲みに台所へ出ると、今泉の部屋から二人の楽しそうな声が聞こえて来た。


――― 翌朝。

「来週、私は出張でおりませんので、設楽主任さんに任せてありますので、皆さん協力して事故の無いようにして下さいね。」

冬が看護師達の前で朝のミーティングで話していた。朝いつもよりも早く、冬を副院長室で待っていたが、来なかったので、医局へと行き、その後病棟へと降りた。

「師長さん…出張はいつですか?」

小鳥遊は、家でもそんな話は、全く聞いていなかったので慌てて冬に聞くと、今泉と日にちが被っていた。ミーティングがいつものように終わり、副院長室へ行くと、事務員がやってきた。

「先ほど月性師長がお見えになって、今日のお掃除を済ませていきました。」

確かにシュレッダーに掛けられたゴミは無くなっていたし、花瓶の水も取り替えてあった。訝し気な顔をしていると、院長がやって来て確かに掃除をしていきましたよと言った。

…ワザとだな。

「彼女はいつも何時ごろここに来ているんですか?」

「えーっと時間はまちまちですね。でもいつも10分ぐらいはこちらにいらっしゃいますよ?」

どうしたわけか、小鳥遊が居ない時に限って頃合いを見計らって来ているようだった。

















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