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第8章 お留守番

「突然決まった事なの…ごめんなさいね。」

冬は悪びれもせずに言った。
夜は珍しく家族皆で食事を取ることが出来たが、相変わらず小鳥遊と冬の間には、ぴりぴりとした緊張感があるような気が今泉はした。結局副院長室の掃除も、最初の一日だけで、それ以降は、冬に一度も会うことなく終わってしまった。

「二人とも出張だなんて、子供達はどうするんですか？」

小鳥遊は不機嫌になった。

「春さんが来てくれるんでしょう？」

今泉は子供達が食べた後片付けをしながら冬に聞いた。

「それがね、母も父が帰って来てて用事があるからって言われちゃったの。だからベビーシッターさんを頼むしかないわね。」

冬はしれっと言ってのけた。

「あなた…自分の子供を他人に預けて心配じゃ無いんですか？」

小鳥遊は呆れた。

「心配だけど仕方が無いでしょう？誰かが居ない時には、誰かがカバーする。いつもしていることじゃない？」

「あなた達は、仕返しをしようと僕にしているんですね？」

小鳥遊が益々不機嫌になった。

「そんなこと無いよ！院長に聞いてみてよ。僕だってガクさんに子供達を見て貰うのは心配だよっ！」

今泉は慌てて言ってハッとした顔をしたが、つくづく自分があてにされていないことが判り、小鳥遊は大きなため息をついた。

「あら…嫌だガクさん。そんなことしたら公私混同も良いところでしょう？そんなこと私はしないわ。」

冬は真面目な顔で大げさに小鳥遊をじっと見ながらチクチクと嫌味を言った。流石に今泉が笑わないところを見ると、ふたりが共謀してやったとは考えにくかった。

「じゃぁ僕が、華さんと夏さんの面倒を見ますっ。」

冬が声を出して笑った。

「私と静さんは、ひとりでふたりの子供を面倒見るのはしょっちゅうだけど、ガクさんは今までそんなことしたこと無いのに出来る筈が無いじゃない。」

「あなた達に出来ることが、僕に出来ない筈が無いじゃないですかっ。」

売り言葉に買い言葉とは、まさにこのことだった。

「緊急オペもあるかも知れないのに？そんなの絶対無理よ。」

冬の言う通りだった。今まで、小鳥遊が居る時には、冬か今泉が必ず居た。

「大丈夫です。」

小鳥遊はきっぱりと言い切った。