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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第9章 「雨上がり」
「いやぁ…これは、参ったなぁ…」
「あれ…?幸太郎さんじゃありませんか…?」
「あぁ…磯毛警部、先日は何のお構いもできませんで…」
「幸太郎さんも小柳民吉の講演をご覧になったんですか…?」
「えぇ、まぁ…」
「ほぉ…、そりゃあ意外ですなぁ~。そういったモノには興味のない方かと思っとりました」
「いえね、大きな声じゃ言えませんが…私は以前、彼の自伝本を執筆したことがあるんですよ…つまり、今日だって仕事の付き合いってやつです…」
「彼の自伝本…それは、一体どういう意味ですかな…?」
「ほら…私なんかまだまだ売れない探偵小説を書いている身でしょう?本業とは別の執筆をしないと、満足な収入なんて得られないんですよ」
「はぁ…大変なんですなぁ…」
「まぁ、いわゆるゴォストライタァってやつです…」
「人っていうのは、どんなところで繋がっているのか分からんもんですなぁ」
「ははは…でも、知人って程ではありません。あくまでも仕事上の付き合いのみです…」
「なるほど…。ところで…今日は克之さんはご一緒じゃないんで?」
「あぁ…あいつも後から来るはずだったんですけど、この土砂降りでしょう…。きっと、何処かで雨宿りでもしてるんじゃないかと思うんですけど…」
「そうでしたか…。それにしても、なかなか上がりませんなぁ…」