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裸の傑作
第8章 ブルーになる日
しの子の妊娠検査薬は、見事にブルーになった。


「やっぱり、できたんだね」


薫は笑みを浮かべている。


「アフターピル、効かなかったのかな」


「そうじゃないの。私、飲まなかったの」


「どうして?」


薫の声は責めている口調ではなく、純粋な興味から発せられるものだった。


「薫君のを、なかったことにしちゃうのが嫌だったから」


気持ち悪い奴だと思われたかなと、しの子は本心を言ったことに後悔した。


「そっか。」


薫はにっこり笑い、しの子の頭をぽんぽん撫でた。


「でも、薫君、やっぱり子供、下ろそうか」


「どうして?せっかく生まれてくるのに?なかったことにしたくないんでしょう」


「だって、薫君まだ学生じゃん」


「来年卒業するし、生まれてくる頃には俺も社会人だよ。大丈夫」


「俺は、しの子さんと俺の子を、幸せにしたい。・・・なんてね」


薫は照れ笑いを見せた。


しの子は薫の笑顔がまぶしかった。


その澄み切った目の中に、どす黒い不安は微塵も浮かんでいなかった。

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