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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第4章 満月
今日は満月のはずなのに
窓から見える夕空には
月は見えなかった



『古川様ですね!?』
席に座る僕にショップの店員が声を掛けた


もうすっかり顔馴染みになり
苗字まで覚えられてしまったのか…


『はい?』


笑顔を作ろうと思ったが
自分でも意外なほど落ち込んでいて
頬がひきつったまま店員の顔を見上げた



ん?
いつ苗字を教えたっけ?


彼女と話をしているのが
聴こえたのかもしれない…


いや 待てよ!?
二人の時はお互いの名前を呼んでるはずだ


どうして苗字を知ってるのだろう?
働かない思考をフル回転刺させた


『お手紙をお預りしております』
一通の手紙を渡された


『はぁ…手紙?』
思いも寄らない出来事に
僕は間抜けな返事をしていた




古川 蓮 様へ

香坂 幸より




彼女からのものだった





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