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第5章 Matrimonio
1人じゃないし。
っていうか、そもそも変顔なんてしてないし。

...そんな変な顔だっただろうか。心配になってきた。

「そんな変な顔してた?」

「うん。でも、変顔も可愛いよ。安心して?」

羚汰は、両手の指を絡めるようにつなぎなおしながら、楽しそうに笑ってる。
今にも鼻歌でも歌いだしそうだ。

ま、いいか。

変顔の私を可愛いって言ってくれるのだもの。

変顔だって言われたのに、羚汰につられて笑顔になってしまう。

2人でえへへ。あはは。と笑っていると急に羚汰が息を大きく吐いた。

「ヤバい。今すぐマンション連れて帰りたい」

つないだ手が引き寄せられ、指に羚汰の唇がまた触れる。

今度も自然な流れで、抵抗する間もなかった。

手の向こうに見える羚汰の伏せた目元が、すごく色っぽい。

羚汰が触れた唇から、稜の体全身に熱が広がってゆくようだ。

稜も早くマンションに戻りたい。

だけど、羚汰の卒論のこともある。

今帰ったら、きっと勉強どころではなくなってしまう。

結婚式には、万全の体制で臨みたいのもある。

「...明後日、だから」

「うん。分かってる」

必死に耐えているかのようにそのまま動かない羚汰に、なんと言えばいいのだろう。

「失礼しまーす」

タイミングが良いのか悪いのか、カフェラテが運ばれてきた。

とん、とん。と、テーブルの上に並んで置かれたのは、1年前と同じイラスト。
カップの中、あのキャラクターが向き合ってキスをしている。

「あ!!」

驚いている間に、大きなプレートもテーブルに置かれた。

そこには、片側に小さなパンケーキがいくつも重なって数種のベリーフルーツが乗り、もう片側にはチョコで書かれたメッセージが見える。

“Happy Wedding”

その文字の横には小さく、カフェラテと同じキャラクターが寄り添っている。
チョコだからから、カフェラテとは違ってシャドウだがそれは仕方ない。

でもとっても可愛くて、素敵なデザインだ。

「すごーーい!!!」

「おめでとうございます!」

そう言われて見上げると、さっき羚汰と話し込んでいた店員さんだ。

「ありがとう!」
「ありがとうございます!!」

羚汰とお礼を言いながら、さっき羚汰がこの店員さんと話し込んでいたのはこの事だったのかと急激に納得した。
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