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第5章 Matrimonio
1年前と同じカフェラテに、お祝いのパンケーキプレート。

なんて素敵!!

「よかったら、お写真撮りましょうか?」

「お願いします」

羚汰が稜の座るベンチシートに素早く並んで座る。
肩に手を回し限りなく寄り添って来たが、そんなことが気にならないほど稜もテンションが上がっていた。

何枚か連続でパシャパシャと撮ってくれる間に、調子に乗った羚汰がほっぺにキスをしてきた。

「!!」

驚いて羚汰を見るも、楽しそうに笑っている。
狙ってやったに違いない。

「はーい。確認してくださいね」

軽く苦笑いの店員さんが、スマホを羚汰に返していて。
稜は、何も言えなかった。

「ありがとう」

店員さんが去ってから、まだ引っ付いたままスマホを覗き込んでいる羚汰を肘で小突く。

「もう!!」

「痛っ!」

大袈裟に羚汰が痛がって、でも嬉しそうに笑っている。

「見て!スゲーいい感じに撮れてる!これ、稜にも送るね~」

「...ありがと」

素早く画像をタップする、その顔を見つめる。
稜の体を包み込むように腕を回しているので、凄く距離が近い。

「んー?何、そんな見つめて」

「だって、いつあっちに帰るのかなって」

携帯の作業が終わったのを見計らって、片腕を持ち上げるようにして逃れようとしてみる。

「ひど!!」

「だって、狭いって」

壁際が一面ベンチシートになってるとはいえ、本来は1人で座るスペースだ。
そこで2人でくっついているのだから、カフェラテを取ろうとしても、手さえ伸ばせられない。

「えー」
「ちょっと!」

大きな声を出そうとする羚汰を慌てて制する。

「ほら、これじゃパンケーキ食べれないし」

何より回りの目が気になって仕方ない。

「じゃ、パンケーキ食べさせてくれる?」

はい?

「“あーん”って。そしたら戻る」

キラキラの目で覗き込まれる。

「...1口だけよ?」
「やった!」

早く済ませた方がいい気がした。

大急ぎでざっくり切ったパンケーキを、満面の笑みの羚汰の口に放り込む。

「え!ひょっと!...っ、でかいし」

「はい。戻ってー」

もぐもぐ口をさせながら、羚汰がシブシブ自分の席に戻る。

「なんか、イメージと違ったんだけどな〜」

恥ずかしくて、自分も大きなパンケーキを口に入れる。
ふわふわで口の中で蕩けてゆく。

「美味しい!」
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