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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第4章 聖なる贈り物
玄関ホールでは橘の指揮の元、賑やかにクリスマスツリーの設置と飾り付けが始まった。
下僕総動員でツリーが設置された後は、納戸に仕舞われていたオーナメントを出し、飾る場所を協議しながらの飾り付けだ。
梨央はメイド達と一緒に楽しそうに、鈴や天使のオーナメントを飾り付ける。
そんな梨央を見るだけで月城は幸せだった。
そして、ツリーの天辺の大きく輝く金色の星を飾るのは梨央の役目だ。
梨央を抱いた月城が脚立に慎重に乗り、梨央に星を飾り付けさせる。
梨央の小さな手が、星のオーナメントを丁寧に飾る。
「できたわ!月城」
梨央は本当に嬉しそうに月城を振り返り笑った。
「はい。とても綺麗です。梨央様」
「お父様も喜んでくださるかしら?」
「もちろんですよ。旦那様もきっと驚かれます。こんなに美しいツリーをご覧になって…」
梨央はその美しく可憐な顔に、恥じらうような笑みを浮かべた。
…梨央様、本当に嬉しそうだな…。
早く旦那様がお帰りになるクリスマスイブになるといいな…。

月城は脚立から梨央を降ろす。
梨央は軽やかに橘のそばまで駆けてゆき、自分の星を指差し自慢する。
橘は梨央にしか見せないような優しい笑みを浮かべ、梨央の頭を撫でた。
「…橘さん、ああ見えてクリスマスが大好きなのよ。ツリーを飾ってクリスマスが終わるまでの間はとにかくご機嫌なんだから。…分かりにくいけどね」
メイド長の茅野が月城にそっと囁き、いたずらっぽく笑う。
「そうなんですか…」
そう言われてみると、橘の声がいつもより晴れやかだ。
月城もそっと微笑む。

…クリスマスか…。
去年までは絵本や外国の本の中だけに存在する世界だった。
今年は自分がその世界の中にいる。
美しく可愛らしい天使のような僕の御主人様と過ごせる…。
その奇跡のような幸せに月城はまだ慣れることが出来ない…。
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