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新月の闇 満月の光
第6章 御劔家と如月家 (みつるぎけときさらぎけ)

「母さん、取り敢えず中入ろ」




俺は母さんを促して家に上がった。


戸籍上では姉が母だが、実際はそうでも無い。


俺を産んだ母は、やはり母親で姉の替わりに俺を育て上げた。


姉夫婦が欲したのはあくまでも後継ぎで。


もし俺が2人の実子であったのなら、あの2人が俺を育てたのだろうか。


あぁ、なんて事を考えてもまるっきり意味なんて無い。


だから俺は、義理の両親を『姉』、『義兄』と呼んでいる。




「父さんは、どうしたの? 出て来ないけど? 」


「真紘が帰って来ると知って、朝っぱらからいそいそと海釣りに行ったわよ。鯛釣ってくるんだって息巻いてたわ。ふふっ、坊主に成らなければ良いんだけれど」




母さんがそう言ってコロコロと笑う。


父さんは早い内に跡目を姉に譲ると、楽隠居を開始した。


総ては愛する母さんの為に。


俺の所属する会社、『サングリア』は、父さんが設立した会社だった。




「それはそうと、義兄さんと、姉さんは? 」


「彩花は色んな人引き連れてもう直ぐ帰宅するわ。省吾さんはもう少しかかるわね」


「そっか…………。義兄は相変わらず? 」


「そうね………。『相変わらず』よ。手ぐすね引いて待ってるみたいだから、気張りなさいよ。私、結芽ちゃん、気に入ってるから。不思議なものね。貴方をどん底へ落としたのが亜依ちゃんなら、救い出したのが結芽ちゃん。双子なのにこうも違うのよね…………」




母さんは、庭に隣接する廊下を抜けながら蒼い蒼い空を見上げた。




「結芽ちゃん、早くお嫁さんに来てくれないかしら……。おかあさん、こんなに楽しみにしてるのに、肝心の息子はヘタレだから未だにプロポーズは無しときてる…………はあぁぁぁ……おかーさん、憂鬱❤」




何処が憂鬱なんだよ。


語尾にハートマークが見えてるよ。
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