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新月の闇 満月の光
第6章 御劔家と如月家 (みつるぎけときさらぎけ)

「真紘、取り敢えず荷物降ろしてらっしゃい。部屋はそのままにしてあるから。降ろしたらリビングにいらっしゃい。一緒にお茶しましょう」




母さんが俺の部屋の前で立ち止まるとそう言った。


俺の部屋も、長い廊下と庭に面していて、障子の引き戸だ。


けど、開けてみると、意外と中は洋間の造りに成っていて。


荷物の殆どは此処に置いて行っているから、高校生の時のまま、此処だけ時間が止まって見えた。


塵ひとつ無く、綺麗にかたずけられている部屋を見て、僅かながら罪悪感が心を過ぎる。


前回この家に立ち寄ったのは何時だったか?


随分と帰って居なかった事に、今一度思い当たって、俺は、荷物を降ろしながら溜め息を付いた。




両親共に、寂しかったに違いない。











ことり。


ダイニングテーブルの決まった場所に座ると、紅茶のカップが置かれた。


今日は、母さんの好みで紅茶らしい。


目の前に母さんが座って、一口紅茶を啜って言った。




「真紘……、また、あのバイトするんですってね。大丈夫? かあさん心配 」


「ん、大丈夫だよ……。今度は俺の意志でやる事だから 」




本当に心配そうな母さんの声音。


あの頃を思い出して心配なんだろう。


本当、『mahiro』には振り回されたから。


母さんは、逸れを間近で見て来ていたから。


とても心配してくれている。




「お前が良いと言うんだったら、かあさんもう何も言わないけど……何かあったらちゃんと話してよ。父さんもかあさんも真紘の味方なんだから……」




母さんの言葉に、俺は黙って頷いた。
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