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新月の闇 満月の光
第7章 ルビーとエメラルド

「結芽さん、何だかやりにくそうですね……。あのシーンなら、恍惚な表情に成らなきゃ駄目なのに……。滅茶苦茶違和感有りっすよ」




木坂の言う通りだった。


結芽の耳元で何か囁いている合坂が、結芽の首筋に僅かに触れながらルビーのネックレスを付けている。


合坂の唇が明らかに結芽の首筋を這った。


ちらちらと、覗く、舌先。


巧みに繰り出される愛撫。




「まずいな、結芽が飲まれてる。合坂の奴、彼女を喰うつもりか」


「ええっ!? 主役は結芽さんっすよ!」


「…………あいつ、ちゃんと企画書目を通したのかよ。あくまでも、主役は彼女なのに」




黒髪をオールバックにし、黒服を身に着けた合坂が、結芽を仰け反らせて首筋を愛撫する様は、まるで吸血鬼。


ルビーのイメージなんだろうけど、アレでは宝石も結芽も霞んでしまう。


俺はそろりと、社長と監督の後ろまで行くと、後ろからモニターを覗き込む。


やはり…………。


カメラが、引き気味のアングルで、2人を捉えている。


結芽のアップが撮れないのだろう。


はぁ~。


思わず、溜め息が出た。




「下手くそ…………」




思わず口を付いて出る悪態。


それに監督が反応した。




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